タキ

ONODA 一万夜を越えてのタキのレビュー・感想・評価

ONODA 一万夜を越えて(2021年製作の映画)
3.8
戦後30年ものあいだ、フィリピンのジャングルで生活し辛いことも山ほどあったろうに根本のところで小野田さんはなんだかんだ言って常に楽しそうなのだった。忠誠心や猜疑心の強さもあっただろうけど本当のところはこういう人だから耐えられたのかもしれない。1番印象的だったのは先に投降した赤津や小野田さんの兄と父が拡声器で戦争は終わったからでてこいと呼びかけても敵の作戦だから引っかかってはダメだといまの戦況や世界情勢を日本軍に都合よく類推し、父が詠んだ俳句を暗号に違いないと興奮気味に解読するシーン。辻褄があわなくても全く意に介さず子供が秘密基地で戦いごっこをしている感じに似ていてとにかくワクワクが止まらぬ様子で楽しそうなのだ。海岸で諜報部員と会うという彼らのストーリーも海に着けば目の前の楽しいことに気を取られて忘れてしまったように海水浴に興じている。それが同性愛にも似た関係性を築いていた小塚を失い1人きりの孤独な日々に精神的な疲労を覚えた彼はそれまで見たことのない日本人の青年の声を聞きその姿を晒すことになる。かくれんぼしてたらみんないつのまにか離脱していてひとり取り残されたような途方もない孤独。早くお家に帰らなきゃときっと誰もが思うだろう。
上官の谷口少佐の戦前戦後の変わり身よ(イッセー尾形がうまい!)いまやフツーのオッサンから出された解除命令を大真面目に聞くのもごっこ遊びみたいだった。
その後の小野田さんのことはことは描かれなかったけれど物足りないと思い続けていたのではないかと想像している。
鈴木も少年のような無邪気さを持った若者だった。まるで次の遊びに誘ってくれそうなそんな雰囲気。太賀はこういう役が異常にハマる。
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