わわう

コンパートメントNo.6のわわうのレビュー・感想・評価

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)
3.8
実際に自分が体験したことはないのに、全体的になんとなく懐かしい気持ちになる良いお話だった。

リョーハは粗野で乱暴で、そういう男性の弱い一面、ダメな男のどうしようもない優しさ…みたいの、どうしたってきゅんとしてしまうけど、同時にそれを手放しで良しとしてしまうことの危うさも少し思ってしまったかな…。私ももしリョーハみたいな男の人と寝台列車で同室だったら…と思うと、前半はラウラと一緒に結構居心地が悪かった。
とはいえ、観てる間にだんだんリョーハが愛おしくて大好きになった。言動が乱暴なだけで暴力振るったりはしないし、その対比みたいに登場する、穏やかで優しげに見えたフィンランド人?のバックパッカーは泥棒だったりするし…。
リョーハはただ素朴で、困ると怒ってるみたいになったり、やきもち妬いたり、自分は全然興味ないのに一緒にペトログリフを見に行ってくれたり…良い意味でこどもみたいで、見てるとなんだか懐かしい気持ちになった。

ラウラがずっと行きたがってたペトログリフはすごい僻地でなんにもなかった。なんにもなくて、ふたりしかいなくて、それがすごく良かった。
こんな何にもない世界の果てみたいな場所にまで一緒に来てくれる人が私にはいるだろうか、とか考えてしまった。それはもう、愛だよな…

ラウラがロシア人の恋人について、彼女の人生の一部になりたかった、と話す場面があるけど、リョーハもラウラに対して同じように思っているのかもね…切ない。

一晩停車する間にリョーハの知り合いのおばあちゃんに会いに行くくだり。このおばあちゃん何者なの?知り合いってどういう関係?という謎な感じも良かったし、雑多な感じのおうちでのもてなし、テーブルの上の料理とかもなんとも言えず素敵だった。
ラウラがリョーハの似顔絵を渡してリョーハにも描いてって言う場面、私もぱっと絵が描けないので、あのリョーハの困り具合が微笑ましくもありいたたまれなくもあり…笑 印象的なシーンだった。

なにより終わり方がすごくちょうどいい、、好き。
ラブストーリーではない、かといって友情ともまた少しちがう、愛の話だと思った。
あと、オープニングとエンディングのクレジットのデザインもおしゃれで良かった。
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