王冠と崑敏

異動辞令は音楽隊!の王冠と崑敏のネタバレレビュー・内容・結末

異動辞令は音楽隊!(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

久々に長めのがっつりネタバレ・レビューです。

新作公開日に東野圭吾原作の旧作映画を何か観ておこうと、色々調べて行く内に、何故か此方の作品にたどり着きました。元々クリップはしてあったのと、U-NEXTで2月上旬までの配信とあり今回鑑賞の運びとなりました。

☆ログライン・どんな映画?
違法捜査ギリギリのやり方で愚直にやってきていた刑事一筋30年の叩き上げ警部補が、突如、警察音楽隊へ異動を命じられて、そこで新たな出会いをして、自らを見つめ直し、大切なモノを見つける作品。

阿部寛さん演じる成瀬は、加賀恭一郎とは異なり、コンプライアンスの反意語(反意語なんや?)が服を着て歩いているような刑事畑一筋30年昭和の古いタイプの男。部下に怒鳴り散らし、上司に噛みつき、令状なしの強引な捜査もなんのその。兎に角、犯罪者をとっ捕まえるべく、ゴリゴリと突き進む。認知症の母親に苦労し、2年前に妻とは離婚、母親と同居している高校生の娘とも上手くコミュニケーションが取れない。特殊詐欺の1つ『アポ取り強盗』を追い続けている成瀬だが、目星を付けている男は居ても、その先の元締めまでは未だ、たどり着けないでいた…
💬お年寄りの大切な資産を狙って警察を語り電話で内情を探り、宅配業者を装って、強盗に入る手口。スパナで殴って、ガムテープで拘束&口を塞いで、事にあたる三人組。
その辺りの描写がちょっと痛々しく目を背けたくなるリアルさです。成瀬はそんな連中が許せず身を削って捜査に当たりますが、突然の異動辞令、異動先は、警察音楽隊。管理官や本部長に楯突いたり、コンプライアンス部門にパワハラ被害を訴えられ、スパーンと厄介払いをされてしまいます。

その異動先も、ほとんどが音楽隊と『本業』の兼任ばかりで、お世辞にも上手いとは言えないバラバラな状態の部署。なにより、望んで所属しているのは、課長と音大出身のトランペット担当の清野菜名さん演じる来島春子のみ。男の子を育てるシングルマザーを演じる清野菜名さんがハマってました。お名前とか出演作品はなんとなく存じあげてはおりましたが、ちゃんと芝居を見るのは初めてでした。その彼女と成瀬は最初こそ反発し合いますが、成瀬が彼女に弱さを見せてから、初めて二人でセッションをして距離がグッと縮まり、成瀬の態度も、変わっていきます。ドラムの練習も本格的に始め、自主練中の借りスタジオで、軽音部の娘とバンド仲間達と出くわしてセッションするのはとても良いシーンです。顔つきもそれまで、『マル暴』みたいだったのがガラッと変わります。元部下の磯村勇斗さん演じる坂本にも謝罪してまるで別人のようです。

音楽隊も、ずっと下手糞なアマチュアバンドだったのが、成瀬の熱意に引っ張られるかのように、それぞれが意識を高く持ち始め変わっていきます。この駄目駄目チームがあるきっかけで変わっていく件って映画にありがちな雛形ですよね。ピッタリ当てはまる作品が浮かばないですけれど(笑)

環境が変わって良いじゃんと思わせてから、全てを失う展開になるのが良い映画の脚本なんですけど、1つは、本部長が、音楽隊自体を廃止させてしまおうとするところ。もう1つが、ずっと音楽隊のファンで居てくれた老婦人が、アポ電強盗の被害に会い亡くなってしまうところです。

ここからが、犯人逮捕のクライマックスなんですけど、ちょっと弱いかな?ご都合主義的かな?と思います。でもね、事件解決だけでなく、音楽隊存続の危機も回避しなければならないのです。なので、その2つをいっぺんに解決する方法は、アレしかないかな?と思います。春子の退職も食い止められるかな?とも思いましたが、それは叶わなかったようでした。でもね、彼処は、成瀬の言葉掛けが精一杯の方法だろうな。成瀬と春子のシングルズが恋愛関係に陥ったりしたら冷めますからね(笑)

終わりに…阿部寛さんって、割と人情味溢れる芝居が上手な俳優さんだと思いますけど、実は最終学歴は、中央大学理工学部電気工学科卒業のガチガチの理系で、東野圭吾作品で言えば、当たり役の新参者の人情刑事・加賀恭一郎より、物理学者・天才ガリレオの湯川学に近いんですって。お芝居も、理論的なアプローチで、何パターンも事前に考えてリハーサルから作り上げていくんだそうですよ。そんな阿部さんは、触ったこともなかったドラムを徹底的に練習して本当に叩いているそうです。凄いね!

終わりの終わりに…劇中に2本リビングのテレビで映画が放送されているシーンがハッキリ映るんですけど。そのうち1本が、何故か、2024年、一発目に観たゼイラムの一作目で驚く😲っていうね。
王冠と崑敏

王冠と崑敏