王冠と霜月いつか

ブラッド・レッド・スカイの王冠と霜月いつかのネタバレレビュー・内容・結末

ブラッド・レッド・スカイ(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

テロリストにハイジャックされた飛行機の乗客の1人がヴァンパイアだったら?

というログラインの映画です。ジャンルでいうと「家の中のモンスター」ですね。

 スコアは、3.9。観る人を限定しますが、まあ観ても損はしない作品です。吹き替え版でおかわりもしました。個人的に好きなタイプの作品です。

オープニングはエンディングの一歩手前の、飛行機が空港に到着して対テロリストチームが機体を取り囲んで、コクピットに居るアラブ系の男性に対して部隊長が、双眼鏡で覗きながら無線で「言うとおりにしなければ撃つ!」と警告します。交渉ではなく命令なんですね。人質救出よりテロリストの征圧が優先。この辺は日本では考えにくい対応ですね。
 狙撃&突入直前のビリビリした緊張感の中、少年が一人、後方ハッチから降りてきます。保護されて内部の事情を聞かれますが少年は放心状態のまま。その少年・エリアスのフラッシュバックシークエンスで時間が巻き戻され、ストーリーが語られ始めます。
 
スキンヘッドの女性が何処かの部屋…恐らく空港の近くのホテルの一室…で、ウィッグを被るシーン
→少年エリアスが空港の出発ロビーでニューヨーク行きの便のチェックインを手伝ってもらったファリード=コクピットに居たアラブ系の男性と知り合う
→女性はスカイプでニューヨークの医師と話をしている=女性がスキンヘッドなのは、病気で恐らく薬の副作用だとわかる。
→女性がエリアスと落ち合う。二人が親子とわかる。何故一緒ではなかったのか?
→ロビーを移動中の二人の背後に夜の空港が映し出される
→セキュリティゲートを通る。沢山の薬の瓶と注射器。係員は何も言わないが、母親は「処方箋を見せますか?」とわざわざ尋ねる…

文章にすると長いですが、映像での説明がキチンと作られているので混乱はしません。何故一緒に空港に来なかったのかは一回目の時はわかりませんでしたが💦…日没を待っていたんですね。

母親は直ぐさま洗面所で、薬を自身に💉射つ。彼女の反応でかなりの強い薬である事が推察出来る。機内でも再び時間を空けずに射つ描写…放っておくと、ヴァンパイア化が進行して自我を失ってしまう。投薬でそれを防げる。つまり、ヴァンパイア=伝説のモンスターではなく、感染症の一種という位置づけ。近年のゾンビ系とコロナウイルス感染をミックスしたような設定です。

テロリスト達が行動開始。スカイマーシャルを手際良く始末するテロリスト達、手慣れた感と、CAで潜り込んでる仲間の一人で、キーキャラのサイコパス=エイトボール(以下:8、どうやらスラングで1/8オンスのコカイン、メタンフェタミンという意味らしい=イカレてるって意味かな?)のキャラ紹介。イカレてるけれど、有能という厄介なキャラ。只のオネエCAではなかった。
テロリストたちは、即座に機内を征圧し、リーダーがコクピットへ。セキュリティロックが掛かっていて外からは開けられないと説明するCAにカブリ気味でドアが開き、副操縦士が出てくる。既に機長は口から泡を吹いて死亡。副操縦士もグル。クルーの内2人もテロリストの一味、大丈夫か?このエアライン(笑)

エリアスは、機内の見取り図を見て隠れる場所があると母親の制止を振り切り席を離れる、母親も追うが、8に見つかって胸部に複数発被弾し、倒れる。
…ここで、視聴者は驚きこそすれ、彼女が死んだとは思わない筈です。死んだと思ったのは、搭乗客の一部と8だけ。フラッシュバックして彼女が噛まれてヴァンパイア化した理由が説明されますが、メインビジュアル等情報は公開済なので、死んだ筈の彼女が蘇生する辺りで、ようやく来たか!と待ちわびていた感じだと思います。ここまで1時間程、ちょっと展開が丁寧過ぎて退屈だと感じてしまう方も居るかも知れません。本来ならテロリスト達は爆弾を仕掛け、パラシュートで脱出して任務完了、母親も、飛行機の進路を戻して治療を受けにニューヨークへ行けて一件落着…となる訳はなくて、例のサイコCA:8が、母親が生きている事に気付いて、計画は頓挫、テロリスト達は機内に留まり、母親との本格バトルになります。しかし母親は能力を全開には出来ないハンデを抱えたままなので、ヴァンパイア無双とはなりません。能力全開にすればテロリスト達を瞬殺出来たかもしれなかったですが、能力全開=自我崩壊、それは、息子を自分の手で殺めてしまう可能性があると言う事なので、薬を射ちつつの対応、この匙加減が難しいのでテロリスト達を倒すヒーローの役回りが出来ません。この辺りが視聴者からすると物足りない=評価厳しめ、なのかなとも思います。
母親のドラマ上の欲求は未だ治療を受けて人間に戻る事なので、脚本としても難しいなと感じます。

そんなこんなで、8は母親から採血した血を自らに射ち、ヴァンパイア化、機内はWHOも裸足で逃げ出すヴァンパイア・パンデミック状態で超カオス、母親も、治療を諦めテロリスト達から子供を守るに目的を変更、エリアスをファリードに託して、副操縦士の血でエネルギーチャージして決着に向かいますが、時既に遅し、8の力は強力で母親では倒せず、エリアスがおびき寄せて、貨物室の扉を爆発させて開け、なんとか母親と強力して8を機外へ放り出そうとしますが、8も簡単には振り落とされず、ファリードの機転で8を日光に当てなんとか倒すことに成功したのでした。

ちょっと物足りないのは、母親とエリアスの愛情を描くシーンが少ないからなのかと思っていましたが、エリアスは、時に母親を励まし、薬が乱闘で無くなれば、ニューヨークの医師に処方箋の発行を依頼し、一旦近くの空港に着陸し、次の便でニューヨークへ行くことを提案し、母親がダメージを受けていると判断すれば自分の手首を切って血を呑ませて回復させるという、とても聡明な子供でした。母親が何度目かの蘇生をした時、既に自我崩壊している事も悟ってしまいます。貨物室の扉から日光が差し込んでいなければ、母親はエリアスを襲っていたでしょう。ここで、エリアスは母親との別れを既に覚悟していたんだと二回目の視聴でわかりました。そして、フラッシュバックシークエンス終了。オンタイムに戻ります。

日没を既に過ぎ、ヴァンパイア達のエンペラータイムがやって来ている事も知らず、部隊長はファリードの射殺と機内への突入を命じます。ファリードは機内に残っている爆弾を爆発させそうと試みますが、突入した隊員に確保され、機外へ連れ出されてしまいます。機内に突入した隊員達は待ち構えていたヴァンパイア達に襲われて収集が付かなくなります。エリアスは、ファリードを救おうと飛行機に駆け寄りますが、ハッチから降りてきたのは、母親でした。母親は、迷う事なくエリアスに向かって走って来ます。ハグするため?いえ喰らうためです。エリアスは、悲しそうな表情を一瞬だけ浮かべて、迷う事なく隠し持っていた起爆装置を押すのでした。

ちなみに母親の名前は、ナディア…皮肉なネーミングですね。


長くなりました。最後までお付き合いいただきありがとうございました。よろしければ、御視聴下さい。