おりん

i aiのおりんのレビュー・感想・評価

i ai(2022年製作の映画)
2.8
コウ達やヒー兄がバンドに身を捧げる日々を送っている姿に煌めきを感じたし、赤を強調した演出が暑苦しくて(これはいい意味で)、情熱的で、狂気もあって、生命の儚さも感じられて印象的だったんだけど、圧倒的に説明不足かつ突拍子もない展開で所々困惑も。

コウはじめ青年達がバンドに熱中したり、無邪気にはしゃいだり、ヒー兄が音楽に狂いながら充実した日々を送ったり。自分の価値観としては、ちょっと度が過ぎる…汚らわしい…って思っちゃったけど、彼らにとってはこれが"青春"だったんだろうなと。

あと、ヒー兄が廃れていくのは自業自得だけども、見ていて本当に苦しかった。ヒー兄には共感できないけど、生気を失ったのかのように音楽、そして自分と関わってきたもの全てを手放して散っていくのがなんとも。

上記のように、刺さるシーンもあったし、小泉今日子演じる社長の言葉にハッとさせられたりはしたんだけど…にしてもね、画と音で魅せようとしてるのか、ストーリーや登場人物の想いがイマイチ掴めなかったんですよね。アーティスティックな描写は好きだし、この作品はおそらく「考えるな、感じろ」系の作品だと思うのですが、コウ達がどう人生と向き合うのか、ヒー兄が何を思って考えて音楽や生活を繰り広げたかは知りたかったですね。それが見えないと、キャラクターに愛着も湧かず、置いてきぼりな感じ。

あと、ヤクザとの絡みのも正直分からなかった。ヤクザはコウ達やヒー兄の音楽や生活ぶりをよく思ってないのかな…と一瞬考えたけど、展開進んだらそうでもなさそうだし。瑛太の役も??でした。いい演技してたのに、どんな役どころか分からなすぎて…。

自分は森山未來くんの表現が凄く好きなんですけど、今回の役・ヒー兄の言動が本当に理解出来なくてですね…。否定というより"何でそういう行為をしたのか?"の連続で。彼の表現力は本当に素晴らしいし、毎回見る度に鳥肌立つんですよ。だけど、それに頼っちゃうような演出はちょっとね。ヒー兄の人間性が見えるような芝居も見たかったな。

厳しめな感想になったのですが、作品自体は嫌いじゃないです。時に血生臭く、時に儚い画の魅せ方と強烈に残る音の演出は、ぐっと惹き込むものだったと思うし、GEZANの音楽をもっと聴きたいと感じたので、その点に関しては観た甲斐があったなと。初監督作とのことで、今後はストーリーや心理描写にもこだわって欲しいと思います。次作に期待。

3/24(日)追記:先日観た時に主にハマれなかった理由を書いたのですが、5年後のバンド仲間達の生活ぶりと、ヒー兄への想いを共有するシーンは良かったと思う。垣間見える日常と思い浮かぶヒー兄の人物像。ちなみに、ラストで主人公・コウが語りかけるシーン、あのシーン自分は好きでした。
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