おりん

余命10年のおりんのレビュー・感想・評価

余命10年(2022年製作の映画)
1.8
ごめんなさい。一言で言うと「全く感動できなかった」です。藤井監督の画の魅せ方は美しく、儚く、時の流れを映し出す演出も良かったです。しかし、肝心な物語には全くもって入り込めなかったのが正直な感想です。

余命宣告された話で恋愛を描くなら、まずは人物描写とかそれまでの過程を丁寧に描いて欲しかったですね。尺が長いわりに、余命宣告されてからがそれまでの年月がかなり端折られてるんですよ。どのくらい病状が深刻で、茉莉がどれだけ苦しんできたかが見えて来なかったです。

人物描写の中でも特に不満だったのは、和人。和人が何故自殺したか、今までどれだけ苦労してきたかが見えて来ず、和人の社会復帰までの過程も早すぎるように感じました。和人の描写で不満だったのは、それだけではありません。相手を想っているようで我儘だったり、人の病を軽く見ていたりと…とてもじゃないけど茉莉に優しく寄り添ってるように見えませんでした。茉莉が距離を置きたくても和人は何度も追いかけたり、茉莉の病が治ると思い込んだり、別れを切り出されても離れようとしなかったり。自分が茉莉の立場なら、和人を受け入れるのは難しいですね…。

あと、所々の描写もツッコミどころが多い。
和人が自殺未遂したのに完治が早かったり、和人が入院したのに和人の家族が来なかったり、茉莉の姉が結婚したのに夫は結婚式のシーン以来出てこなかったり、茉莉の病状は深刻になってるはずなのに入院生活に入るまでは普通に飲食やスノボ、旅行が出来てるのに違和感を感じたり…その他にも気になる描写はあったんですがとりあえずここまで。このように、現実味ないシーンが多くて後半は呆れながら観ていました。展開もお涙頂戴に感じて不自然。

かなり辛辣な感想になってしまいましたが、タケルと沙苗はいいキャラクターでした。茉莉にも和人にも働きかけていた人物だという印象を受けましたし、山田裕貴と奈緒のお芝居が特にグッときました。話自体は★1.0なのですが、藤井監督の魅せ方とタケルと沙苗のキャラクターの良さから+★0.8にしてこのスコアにしました。
おりん

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