タキ

LAMB/ラムのタキのネタバレレビュー・内容・結末

LAMB/ラム(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

WOWOWのW座で小山薫堂さんが溺愛していた子羊(ラム)を夫婦が食べる話かと思ってたと言ってて私もペートゥルあたりが焼肉にして知らずに夫婦も食すとか予想してたクチなのであのラストには心底たまげた。アダの下半身でギリぐらいで全裸の獣人を晒すのは禁じ手じゃないかと思ってたけど、このあたり見せられないんだなぁと思われないようにしたという監督の気概を感じる。獣人がでてきても不思議とB級感がないのは、技術力の高さもあるが、作り物ではないあまりに圧倒的な大自然の力もあるのではないかと思う。
クリスマスの夜、羊飼いの夫婦、マリアという(妻の)名前などにキリスト教的な寓意を感じてはいても、いかんせん詳しくないのがツラいところで監督のインタビューやらみなさんの考察やらを読んでふむふむと自分の考えを巡らせている。監督は寓意やたっぷりととった物語の余白の説明などという不粋なことはせず、ただ「シュールなファミリードラマ」だと言っている。当然でしょみたいな雰囲気で食卓につく子羊やこの状況の奇妙さを訴えようとする弟を制する夫婦の肯定力の強さは少なからず笑いを誘う。とにかくアダの造詣がかわいいのでだんだん異常が異常に見えなくなってきて、後ろ指差す隣人もいないわけだし、大音量のドラムや電子音の音楽など自然とは対極の異質さを撒き散らし、義姉に迫る弟さえいなければ「幸せな家族」でなんの問題もない。
主な考察では羊男の正体はギリシャ神話のサテュロス(ギリシア神話に登場する半人半獣の自然の精霊である。「自然の豊穣の化身、欲情の塊」として表現される。その名前の由来を男根に求める説がある)ではないかというものがあった。キリスト教における悪魔とするものもあったが、たぶん山羊の頭をしたバフォメットと混同してそう。
マリアのラストカット、私は受胎を確信した。彼女がアダの母を殺した罪は夫イングヴァルを失ったことで贖われたのではないか。
しかし実父に連れ去られたアダは家への帰り道を知っている。再び出会ったときにマリアはどうするのか。これまで見せられたものより、その未来がもしかしたら1番怖いんじゃないかと思っている。

「LAMB ラム」監督インタビュー 驚愕の“羊の物語”に「今の時代の新しい神話を作ろうとしていたのかも」
https://eiga.com/news/20220923/4/

映画『LAMB/ラム』ヴァルディミール・ヨハンソン監督に訊く──想像力が欠如した時代に一石を投じるネイチャースリラー https://www.gqjapan.jp/culture/article/20220921-lamb-intv

A24『LAMB/ラム』はホラーにあらず!?「シュールなファミリードラマなんだ」監督が語る物語の深層
https://www.banger.jp/movie/83814/

話題の映画『LAMB/ラム』で観客を虜にしている“アダ”はどのように誕生したのか? スケッチ&ストーリーボード&制作秘話が公開
https://weekend-cinema.com/37709/
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