ゆずきよ

ある男のゆずきよのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
4.8
劇場公開時から観たかった作品。
予告も何回か観ていて気になっていました。
配信を心待ちにしていましたが、時間がある時にと温めていてやっと観ます。

物語は、文具店を営む家に出戻りした子持ちの母が、画材を買いに来た男と再婚するも夫と事故により死別。葬儀に来た親族より夫の戸籍上の身分と本人が違うという事が発覚するというお話です。
あらすじ書いてもごちゃごちゃしてます。
幸薄の母が良く似合う安藤さくら。
少し不審な影のある男といえば窪田正孝。
怪しいイケメン弁護士妻夫木聡という磐石の布陣です。
メイン2人の出会いはちょっと怖い。
若干のストーカー臭がします。
いや小石ぶつけて逃げちゃダメよ。
以前に仕事で林業の現場に立ち会う機会がありましたが、慣れている方でも本当に危険な事はあるそうです。
子供の前ってのが切な過ぎるよ。
でもこの映画の核はこの後から。
大人になった写真を見て別人だって言い切れるのも中々凄いと思いました。
ここから主の目線は妻夫木聡が多め。
全然見当違いかも知れませんけど、妻夫木聡の安藤さくらへ向けた目線に何かを感じてしまいます。
ちなみに脇を固める役者も書き表せないくらい名優揃いで、その登場の仕方も実に魅力的な画角でした。
後継者問題、死刑制度、ヘイトスピーチなどメイン以外のメッセージなんかも盛り沢山です。
終盤になるにつれ明らかになる窪田正孝の過去。
実は私このテーマがかなり興味のある分野で、詳しく書くとネタバレになってしまうのですが、以前から追いかけていた内容で非常にそそられました。
そりゃ戸籍を捨てたくもなるよ。
やはり色んなレビューでも書いている事ですが、子供や家族に対して私は潔白な人間でありたいし、汚いお金を家計には絶対使いたく無いです。
そして終盤も絶妙に嫌な空気感を保った状態でクライマックスへ。
物語の特性上スカッとする様な方向ではありませんが、それぞれがそれぞれの明日へという形で終わるのかな?と思いながらラストシーンへ。
冒頭の謎の絵へと繋がるラストシーンは痺れました。

個人的にはかなり面白かったです。
妻夫木聡のヘイトスピーチの件が少し多いなと感じていましたが、ラストまで見て納得。
心の変化や機微を表すには必要な演出でしたね。
台詞やテーマも心に残るものが多く、完全に解決しないというのも現実的でした。
法に触れるという事はつまりそういう事なんです。
それを強烈に味合わせてくれた映画でした。
ゆずきよ

ゆずきよ