オンライン試写にて
2022年にノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーの自伝小説を映画化した、ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作品。
1960年代、まだ中絶が違法だったフランス。望まない妊娠をしてしまった優等生はなんとかして中絶をしようと試みる…
なんて生々しい中絶劇!
主人公アンヌの焦燥、不安、怒り、憤り、欲望、痛みが生々しく描かれ、見ている私たちも体験しているかのような臨場感があるスリリングな衝撃作だった。
中絶は悪、手助けしても逮捕されてしまう。誰にも言えない、でも自分の未来のため今は妊娠はする事は出来ない。1人で戦うアンヌの姿は見ていて痛々しい。
痛みの表現も、中絶方法も何もかもダイレクトに映し出すので、ショッキング。
それでも彼女は自分の未来の為に今は子供はいらないと選択する。
これは女性の権利がまだない時代に彼女が自発的に選択する物語なのだ。
欲望も何もかも、女性だって決められる。
主人公を演じたアナマリア・バルトロメイの目はとても澄んでいて顔立ちも聡明で、若々しい色気もありとてもエロティックでフォトジェニックで素晴らしかった。
彼女の姿を通して描かれる中絶の物語は、
金獅子賞受賞も納得の出来栄えだった。
アフタートークメモ
ゲスト:映画字幕翻訳者の丸山垂穂氏
監督にアニー・エルノーが当時のことを教えたりした
アンヌの服の色は心情を表している
堕胎や堕ろすという言葉は使いたくなかった。マイナスのイメージのため、中絶という言葉を選んだ。
テロップでは最初に妊娠を◯週目と表記していたが、原作通り◯週という表記にした
わかりやすくするため人名を無理やり入れたりした
セリフが少ない方が字幕は難しい
主婦になる病→言語としては主婦に変身する病
どのようにすれば良いか苦心した
中絶という言葉を使いたいたくないので、あの出来事と原作者が書いていた
英題はhapningで原題にある"あの"のニュアンスがなくなってしまっている