エイプリル

フィンチのエイプリルのネタバレレビュー・内容・結末

フィンチ(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

序盤はあまりにも先の見えない絶望的な状況の割に主人公がそれを積極的に解消しようとしていないので、どこがゴールなのか分からず退屈に感じましたが、この作品のテーマが「フィンチの人生の終わり」ということが分かってからはその見通しの無さにも意味があったと分かり逆に良かったです。
SFファンの観たい映像というものを非常によく分かってくれていて、ジェフをはじめとするメカニックデザインや小物の配置、崩壊した都市など、ストーリーを度外視しても目を楽しませてくれました。
また、ジェフが非常にコミカルな性格で、人類滅亡後のピンチな状況であってもジェフがいい感じに和ませてくれるので、シリアスになりすぎなくて安心して見ることができました。あまりにコミカルなのでジャンルをコメディとしても問題ないと思います。

本来の本作のテーマではないと思うのですが、「人間とロボット」という対立軸を見せながら、その実ジェフの思考回路は全然ロボットらしくなくてほぼ人間です。ただ、フィンチの諦めの速さと自分の考えに固執する頑固さに対してジェフは柔軟で諦めも悪いです。まさにこれは「老人と子ども」の対立軸で、その上最後にフィンチが亡くなりその意思をジェフが継ぐことから、「親子の継承の話」としても見ることができました。
継承といえば、結局フィンチはゴールデンブリッジに立つことはできませんでしたが、ジェフの描いた絵の中では三人揃って立っています。人間の意思をロボットが継いでまた歩き出す、というエンドは神話の始まりのようにも感じられて感動でした。

元々のタイトルは「BIOS」だったそうですが、フィンチの人生の最後の瞬間を切り取った映画なので個人的には「フィンチ」として大成功だったと思っています。
犬の出番はそう多くないんですが、それでも犬を撫でながら死ぬの理想の死に方かもと思いました。
エイプリル

エイプリル