りょう

べネシアフレニアのりょうのレビュー・感想・評価

べネシアフレニア(2021年製作の映画)
3.0
 アレックス・デ・ラ・イグレシア監督の作品は初めて観ました。オープニングタイトルがソール・バスを意識した感じでよかったし、スラッシャーホラーをオーバーツーリズムという社会問題と一緒にテーマにするところは興味深かったです。
 スペイン語やイタリア語の早口のニュアンスもありますが、冒頭から目のまわるような描写で、カメラワークもカット割りもかなりスピード感があります。ホラーとなれば、スローな表現からの急転換とか、静寂を効果的に演出するというイメージですが、そもそも怖がらせるつもりすらないようなテンポで物語が進行していきます。こういう表現もあるんだなと思っていると、後半でシリアスな展開になり、少し示唆的なエンディングに…。
 個人的には旅行や観光にはまったく興味がありません。コスパもタイパも悪い娯楽だと思うし、そもそも人混みが好きではないからです。仕事の出張では47都道府県をすべて訪問しています。そのついでに観光してきてもいいはずなのに、そういう気分になったこともありません。そういう事情もあって、オーバーツーリズムの問題は他人事でしかなく、当事者で解決してもらえばいいと思ってしまいます。
 たしかにヴェネツィアの街並みに近代的な大型クルーズ船で乗りつけられたら、せっかくの景観が台無しかもしれません。彼らが観光客に“復讐”するには別な理由があったわけですが…、それが物語のテーマを曖昧にさせてしまったようで、ちょっと印象が悪くなってしまいました。
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