イチロヲ

濡れて泣くのイチロヲのレビュー・感想・評価

濡れて泣く(1977年製作の映画)
4.0
深い喪失感に苛まれている未亡人の女性(宮下順子)が、自らの孤独を埋めるべく未亡人専門の買春サークルに入会する。中山あい子の小説を映像化している、日活ロマンポルノ。

若年のうちに結婚・出産・専業主婦を重ねて、社会を知らないままで再スタートを切ることになった未亡人が、孤独を埋めてくれる特別な男を捜し求めていく。「肉体的繋がり」を欲する男性心理を描きつつ、その性差を訴えていく論法。

宮下順子の性の求道者ぶりが真に迫っており、「こんな人、実際にいるんじゃないか?」と思わせられるほど。青年実業家(遠藤征慈)が運営する秘密サークルの雰囲気作りもまた秀逸であり、異様なほどの説得力が備わっている。

「好きだよ」「愛しているよ」という短い言葉に秘められている、単純かつ複雑な入れ子構造。「口から発する側」「耳で聞かされる側」の、奇妙な心の動きを普遍性豊かに描いている、ロマンポルノの王道的作品。
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