このレビューはネタバレを含みます
全身もしくは腰から上、寄ってもバストアップまでの距離を保っていたカメラが、トリニティ計画を境に時にはアゴから額までしか収まらないくらい、感情的にクローズアップしていく。
聖俗、善悪、科学者と軍人、妻と愛人、民主主義と共産主義、仲間とスパイ、量子力学の不確実性と追い求める確実性。平和をもたらす抑止力と、世界の殺戮を加速させる大量破壊兵器。
映画の中の登場人物はオッペンハイマーに、お前はどっちなんだと迫り、二重性を許さない。
しかし量子力学で導き出されるのは、どこまで突き詰めてもゼロ(=明確な答え)ではなくニアゼロ(=ほぼ0という曖昧な答え)だった。
真実には二重性があるという、映画らしい映画だった。
科学者たちがテーブルを囲む場面で中央に視線を遮る花瓶が置いてある演出が好きだった。
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