Ryo

オッペンハイマーのRyoのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
"我は死なり。世界の破壊者なり"
ーーーロバート・オッペンハイマー

有史以来、最悪の大量殺戮兵器となった「原爆」の生みの親ロバート・オッペンハイマー。彼の視点を通して「マンハッタン計画」から始まる開発経緯と人類史上最も偉大にして最も罪深い業を背負った男の人生を丹念に描く伝記映画。

IMAXカメラで撮影された精彩な映像は美しく、一方で核分裂を比喩した光の迸る演出は劇場に不穏な空気を齎し続ける。核兵器開発の最前線に立った人物達を取扱いながらもグロテスクな描写が控えられている点が、まさに「戦争の被害を最も受けるのは民間人」であることを静かに物語っている。作中では世界を変えてしまった男の苦悩をはっきりと映し出しながら、ヒロイズムをもってその業を肯定することはない。

戦争世代ではないが「原爆が使用された世界唯一の国である日本」に生を受けたという自意識がある私は鑑賞中、片時も目を離すことができなかった。しかし、思わずそのメタ認知を忘れるほどの没入感がこの映画にはある。完成度は勿論のこと、メッセージ性の強さはノーラン作品でも随一の物であることは間違いない。
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