カオス

オッペンハイマーのカオスのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.8
無茶苦茶悩んだがこの映画が出来が良いとか面白いとかオスカー受賞作とか褒める気はさらさら無い。
日本人からしたら原爆のストーリーをエンタメ調に作って上っ面だけの葛藤、苦悩を入れ込んだいつものノーランじゃねーか。
初っ端から3つの時間軸を同時並行する難解な構造でノーランじゃねーか!という作り。
ナチス対策という大義名分があったマンハッタン計画もヒトラー死亡で必要無くなったにも関わらず、まだ日本がある…こんな発想に怒りを覚えないのは問題なんじゃないか。
トリニティ実験でのカウントダウンは成功への時間と同時に日本に投下されることが決した恐ろしいシーン。
その後淡々と広島、長崎に投下された報道が流されるがそんなもんでいいの?
実際の被害を描かず目を逸らしているようでオッペンの本当の苦悩を描くのは無理がないか。
ストローズの嫉妬のキモがアインシュタインとの会話の内容でそれが取り止めのない当たり前の言葉で肩透かしだった。
原爆を作ってしまったという真の功罪の描き方はアメリカ的で結局何も思ってねーんじゃねーかという意識の行き違いを1番感じた。
音楽、音響はいつも通りの迫力で見応えはある。
時間軸手法の巧みさもノーラン節で計算通り。
しかし本当の悲劇はこんなもんじゃねーぞというオッペンの視点だけで作ったこの映画は知雑だ。
エンタメとドラマのバランス、どちらに振り切りたいのか曖昧で欧米人と日本人では受け取り方が定まらない。
ヒットした事は核問題への提唱なのかただの興味本位なのか?私的には後者にしか思えない。
バービーとミームして盛り上がっているような国民性の国でこういうセンシティブな内容の映画がまともに制作されるわけが無いという予想は当たった。
この映画を踏み絵にして平和な世界が来ることを祈るばかり。
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