クリストファー・ノーラン監督作品は、独特の闇を抱えた世界観がいつもあって、この作品も『なぜ?』をたくさん問いかけてくる、とても重厚な作品だった。
この作品の主人公であるロバート・オッペンハイマーは理論物理学者という肩書きがあり、物理学に携わる人たちの頭の中の構造と、ノーラン監督の描く時間逆行や宇宙空間の世界観の複雑難解さは似ているのかも知れない…。
物理学と言えば、小説『三体』のニュートン力学を思い浮かべてしまい、読まれた方もたくさんいると思うが、冒頭から文字のあまりの多さになかなか読み進められず、『物理の何が面白いねん?』という問いから逃れられなかった記憶がある。
自分が夢中になって取り組んだ発見が、自分の元から離れていき、第三者の手によって武器として使われてしまうという出来事から苦悩し、称賛から没落していく姿が描かれているが、オッペンハイマーという人物に魅了された人たちや、彼に嫉妬心を燃やす人など、様々な人物たちの感情が交差していくヒューマンドラマでもあった。
歴史上の人物であるアインシュタインは有名なので名前は知っていたが、そんなアインシュタインの登場には驚いたし、もう少し歴史を勉強してから鑑賞に挑めばもっと理解できたのかなと思う作品でもあった。