なつこ

オッペンハイマーのなつこのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.2
時間の魔術師ノーランらしい構成。
物語は複雑に前後しながら進んでいくことで、色々なものが浮かび上がってくる。

冒頭のあのなんでもないシーンが、最後に効いてくるとか、流石です。

原爆は、国を上げて「ナチスよりも先に手を打たねば!」というあの状況なら、彼が作らなくても誰かが作ってただろうし、そういう意味では彼を責める気持ちにはならない。

むしろ、本当は罪悪感なんて持ってないくせに、日本の被害を引き合いに出して彼を責め立てる検事達に腹が立ちましたね。

全身全霊で国に尽くしても、最後にはその「国」に裏切られる。どこの国も同じだじ、それが戦争なんだろう。

どこまでが史実でどこまでが脚色かは分からないですが、あのストロースのおっさんの執念深さと自意識過剰がオッペンハイマーの転落の引き金だったとしたら、酷い話だ…。

被害妄想強い人って、自意識過剰だよね…あなたが思うほど、オッペンハイマーにとってあなたは脅威では無いし、というか彼の人生において、ストロースなんて全然眼中になかったよね。
オッペンハイマーは地位や名誉が欲しくて活動してた訳じゃない。

鑑賞前は日本人としてどう観るべきなんだろう?って思ってましたが、純粋にオッペンハイマーという人間と、戦争のあちら側、そして怖さを観た180分でした。

今作の怖さというのは、原爆の威力が怖いとか、そういうことではない。
原爆投下が成功したと笑顔で手を叩く人達は「成功」の本当の意味をわかっているのだろうか?
その本当の意味を分かっていたのはオッペンハイマーだけ、という今作の演出は秀逸だったし、いちばん背筋が凍ったシーンだった。
まもなく公開の「関心領域」同様、「自分事」として捉えられていないのが、いちばん恐ろしい。
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