小皿

オッペンハイマーの小皿のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
オッペンハイマーの名前を知っているぐらいで、彼のことはほとんど知らない。
少なくとも『バービー』でみられた原爆を笑いにしたような宣伝には拒否反応があって、未だにこの作品を観る気になれないが、唯一の原爆被害国の者としてこの作品は観ておかないとという思いはあった。
映画がどこまで真実を描いているかはわからないけれども、彼が物理の世界に没頭することを、あの時代が許さなかったというふうに感じた。それほどに彼は思想的であったし、野心的でもあったように感じた。
ユダヤ人としての出自が、ナチへの反骨を生んだであろうし、それ故に彼の物理学者としての、あの時代における使命を見出したのだろうと思えた。
ナチス・ドイツ軍とヒトラーの凋落がもう少しあとの時代であったなら、日本への原爆投下はなかったのかもしれない。
原爆が投下されたことを肯定するつもりはないけれど、広島、長崎の悲劇があって戦争が終わったという事実があって、あの時から80年近くの時が過ぎた。歴史的な事実だけをもとに、もし是とする人がいるのなら、先ずは広島の原爆記念館を見た上で、そう語ってほしいと思う。
そんな人とは友だちにはなれないけれど。
核の脅威を傘に辛うじて均衡を保っている今の状態を、平和と呼ぶにはあまりにも無頓着過ぎないか。
いずれにしろ、今このときに、こうした作品が出て、戦争について、核爆弾について、いろいろ考えを巡らせることは意味のあることだ。
そんなふうに自分を言い聞かせているような気がしている。
いろいろな感情や思考が錯綜していて、今もうまく言葉にできない。
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