ハニー

デューン 砂の惑星PART2のハニーのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.5
映画館で観れて良かったと心から思える作品。映像はとにかく凄まじく、砂嵐に何度埋まったことか。
初めから終わりまで全てが計算された神ショットの数々。戦闘シーンの迫力。砂漠の荘厳な美しさ。独創的なハルコンネン家まわりのビジュアル。音楽も素晴らしいです。

原作は読まずに観ていますが、数多のフォロワーを産んだ金字塔と呼ばれるだけあって、ストーリーは王道の英雄譚かと思いきや、さにあらず。善悪の割り切れない、複雑な物語となっています。

世界観は超自然的なパワー(ベネ・ゲゼリットの操るヴォイスなど)やスパイスなど、SF的な設定はありますが、繰り広げられているのは、見覚えのある現実と地続きのドラマです。つまり、貴族諸侯同士の積年の争い、絶対的権力に見えて実は危ういバランスの上にある皇帝権力。抑止力としての核兵器、お家騒動に政略結婚、宗教的熱狂と狂信者の恐ろしさ、過酷な自然環境と宗教、誰も本当は望んでいない戦争などなど…私たちの生きてきた歴史そのもの。資源採掘をめぐる国同士の権益争いなどは、現在進行形の世界情勢です。


特筆すべきところはたくさんあると思いますが、例えば、スターウォーズが父と子の物語であるならば、こちらは母と子の物語が前面に出ています。物語の中では、陰謀としてですが。
息子ポールにとって、母の存在がどれだけ大きなものか。その大きさと恐ろしさが胸を締め付けます。母親ジェシカは、大いなる目的のためにまるで息子を操るかのごとくですが、時折母親の顔に戻ります。

そしてチャニです。この映画、特に後半はポールが救世主として覚醒するくだりで、チャニの姿勢が観客にとっていちばんの感情移入ポイントになっています。最も客観的で、2024年的というか。チャニの強い、怒りと悲しみを湛えた瞳が印象に残ります。


この映画は女性がテーマであるらしく、黒幕じみたシャーロット・ランプリングをはじめ、母親ジェシカ、皇女イルーラン、チャニ、そしてレア・セドゥいずれも独自の考えを持ち物語を駆動します。表には男同士の権力闘争、国取り物語があるわけですが、彼女たちからすれば、どこの国がどの領地を取るかより、大事なことがあるわけです。このメンバーに、次作はもしかしてアニャ・テイラー・ジョイまで加わるわけですから、楽しみしかありません。

最後に、巷で人気の、フェイド=ラウサ・ハルコンネンですが、レア・セドゥに誘惑された上に子宝を残し、さらにはレアに「性の誘惑に弱い」って分析されてるの最高でした。
あんな、誘惑されたら仕方ないでしょ(笑)
ハニー

ハニー