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ウーマン・トーキング 私たちの選択のnatsumeのレビュー・感想・評価

2.5
日本の九州南部とか四国とか岐阜の山奥あたりの集落を舞台にリメイクしたら、普通に鬱映画が作れそう…と思いました。

個人的にはサバイバーとしてすべての台詞にリアリティと脚本家の真摯さを感じながら観たけれど、被害経験や被害の自覚のない人に、どこまでこの生々しい葛藤が理解できるのか疑問だなぁ…と思ったので、映画としての評価は普通レベルです。

直接的な暴力描写は少ないので学校で見せてディベートさせる教材には適している。女たちがレイプ犯の男たちをホームアローン的な知恵と工夫を駆使して殺りまくる系のスプラッタや爽快アクションホラーなんかを期待してるとがっかりすると思います。頭で観る映画って感じ。

その場にマッチョが一人いたらすぐに「結論から言え」とか「その話今の問題と関係あるの」とか口を挟まれ文句言われるであろう、女たちのまとまらない率直な語り、個人的なエピソードの積み重ね、年齢差に萎縮せずに自分の考えを述べて、辛抱強く相手の語りに耳を傾け、時には意見を変えることを恐れず、共感を諦めない対話の姿勢こそが民主主義の根幹なのだ、というところはメッセージとして非常に重要で、見た人が語り出すことを促すための映画だと思うので、その点では良作です。

ちなみに私がクリスチャンファミリーに生まれたけど洗礼を受けてないのはキリスト教が極めてマッチョで女性差別的な宗教である点に疑問があったからです。なぜスピリチュアルな存在である「神」が男性(父)として扱われるのか?なぜ十二使徒は男ばかりで、イエスや彼らを世話してきた女たちの名は聖書に残らないのか?とかね。

唯一の男性キャストが恋愛要素サービス役じゃなかったとこは、とても良いと思いました。胸糞だし不安も残すけど希望も持てる映画。モデルになった現実の事件は、はるかに胸糞な展開だったようですが。
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