和桜さんの映画レビュー・感想・評価

和桜

和桜

映画(1502)
ドラマ(0)
アニメ(0)

復讐するは我にあり(1979年製作の映画)

4.0

西口彰事件を題材にした直木賞作品を今村昌平監督が映画化。殺人と詐欺を繰り返しながらの逃走劇が取調室での回想形式で描かれる。
題名にある通りキリスト教がベースにあり、罰するのは神だと言わんばかりに安易な
>>続きを読む

斬、(2018年製作の映画)

3.4

刀が生み出す音と間。
なぜ人は人を斬るのか。そんなテーマを訴えかけるように、切らざるを得ない状況へ次第に追い込まれていく。
何の疑いもなく暴力を否定する人間に突き付けた『わらの犬』とも重ねてしまう、時
>>続きを読む

灰とダイヤモンド(1957年製作の映画)

3.7

ワイダ監督による「抵抗三部作」の最終章。ドイツ占領下のポーランドを描いた前二作に対して、最後に描かれるのは戦後のポーランド。
ナチスの侵略からソ連の支配へ。いつまでも終わらない争いの中で、恋に落ちた青
>>続きを読む

悪女/AKUJO(2017年製作の映画)

4.0

女性版『オールド・ボーイ』。
リアルタイムで最初に衝撃を受けた韓国映画が『オールド・ボーイ』なので、それをオマージュする台詞やシーンが刺さりまくった。
唐突に時系列が入り乱れる映画はあまり好きじゃない
>>続きを読む

アップグレード(2018年製作の映画)

3.6

AI搭載型のアクションがひたすら楽しい映画。
これが低予算で作られたというのはジャンル的にも嬉しい。最近は低予算のホラーやスリラー系で一発当てて成り上がっていく若手監督が多いけど、SFでも同じことが出
>>続きを読む

羅生門(1950年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

原案である芥川龍之介の『藪の中』を読む機会があったので映画の方も再鑑賞。改めて、芥川作品をヒューマニズム精神で再解釈した素晴らしい作品。
第二次世界大戦の締結から五年、東京裁判から二年の時を経て作られ
>>続きを読む

オレンジと太陽(2010年製作の映画)

4.0

19世紀から1970年代までイギリスで行われていた児童移民の問題に焦点を当てた作品。国と教会が政策として福祉施設の子供たちを植民地へ送り、強制労働や性的虐待が行われていた事実が明らかになる衝撃的な内容>>続きを読む

地下水道(1956年製作の映画)

3.9

ワイダ監督の「抵抗三部作」の中で一番好きなのがこの二作目。ソ連に唆されポーランドのレジスタンスが起こしたワルシャワ蜂起、その失敗により地下水道へと追いやられた彼らの姿が映し出される。
ソ連の検閲下にあ
>>続きを読む

ペコロスの母に会いに行く(2013年製作の映画)

3.7

認知症を患った母との日々を綴ったエッセイ漫画の実写化。介護や認知症を描きながらも、「ボケるのも悪い事ばかりじゃないかもしれない」と言えてしまうのは衝撃だった。
これは介護の過酷さだけでなく、最終的に認
>>続きを読む

芳華-Youth-(2017年製作の映画)

3.3

年代を明記する中国映画には惹かれてしまうものが多い。そこには中国という国と時代の濁流に翻弄される人々が映され、年代ごとに信じられないほど景色は変わってしまうが、変わらない人間と変わってしまう人間の双方>>続きを読む

リアリティー(2012年製作の映画)

4.3

人を笑わせるのが好きな男は、仲間たちからリアリティ番組のオーディションに出るよう薦められる。照れながらも渋々受けてみると、予想以上に手応えを感じて合格を確信してしまう。周囲にも内定したかのように振る舞>>続きを読む

裁き(2014年製作の映画)

3.5

政治的な歌で下水掃除人を自殺に追いこんだとして民謡歌手が逮捕される。法廷劇と呼ぶにはあまりにお粗末で、不条理な裁判過程。司法に携わるカースト上位から市井の人々の日常生活までを交えながら、インド社会の多>>続きを読む

セッション(2014年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

何度見ても終盤の展開に痺れる。
マッチョイズムな指導をヒューマンドラマ風に仕立てる、よくある話かと油断していると確実に度肝を抜かれる映画。
これが正しいとは思わないけど、最後の最後まで火花を散らし続け
>>続きを読む

天国でまた会おう(2017年製作の映画)

3.5

第一次世界大戦で同僚を助けるために重傷を負ったエドゥアールと彼に救われたアルベール。戦後、二人は貧しい共同生活を送りながら、そんな状況に追いやった上官が戦没者追悼事業で富を得ていることを知り、ある詐欺>>続きを読む

映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~(2019年製作の映画)

3.8

野原一家と言えば家族の団結を象徴する映画が多かったけど、今作は家族である前に夫婦でもあることを教えてくれる素敵な作品。
当時は行けなかった新婚旅行から始まり、他の初々しい新婚夫婦たちに混ざる子連れの温
>>続きを読む

ライムライト(1952年製作の映画)

3.9

どれだけ有名な道化師でもメイクを落とせばただの人。落ちぶれたかつての人気道化師を、晩年のチャップリンが素顔を晒して演じきる。
衰えを感じながら夢を追い続ける老人と、才能を秘めながら自殺未遂を起こした女
>>続きを読む

ディザスター・アーティスト(2017年製作の映画)

3.9

史上最低のカルト映画と称される『the room』の製作過程を描いた作品。総額600万ドルがつぎ込まれたと言われ、企画から監督/脚本/主演と全てを自らが担ったトミー・ウィゾーの情熱と狂気が余すこなく映>>続きを読む

散り行く花(1919年製作の映画)

3.9

西洋社会を啓蒙しようと中国からやってきた青年は紆余曲折の末に挫折。阿片とギャンブルに溺れる堕落した日々の中で、父親から虐待されている少女と出会い恋に落ちる。

映画の父、D・W・グリフィス監督作で彼の
>>続きを読む

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル(2017年製作の映画)

3.8

アメリカ人初のトリプルアクセルを成功させたトーニャ・ハーディングの伝記映画。「ナンシー・ケリガン襲撃事件」に焦点を当てながら、彼女の生い立ちや栄光と転落の半生が描かれる。

興味深いのが、実話ものであ
>>続きを読む

ルートヴィヒ 完全復元版(1972年製作の映画)

3.5

19世紀後半、18歳の若さでバイエルンの国王に就任し、40歳で謎の死を遂げたルートヴィヒ2世の半生を描いた作品。
「美」に取り憑かれた王は芸術によって国が豊かになると信じ、ワーグナーを寵愛しながら劇場
>>続きを読む

消えた声が、その名を呼ぶ(2014年製作の映画)

3.7

未だ公式の謝罪や賠償が示されないアルメニア人虐殺を、トルコ系ドイツ人であるファティ・アキン監督が取り上げ映画化。砂漠での強制労働や虐殺に始まり、中盤からは声を失いながらも奇跡的に生き残った男が何年もか>>続きを読む

怒りの葡萄(1940年製作の映画)

4.0

1930年代、行き過ぎた開拓により断続的な砂嵐に襲われるオクラホマ州。代々その土地で暮らしてきた一族は、農業の出来なくなったこの土地を離れカリフォルニアへと向かう。定員オーバーのオンボロ中古車でアリゾ>>続きを読む

フェリーニのアマルコルド(1974年製作の映画)

3.5

フェリーニ監督の少年期の思い出が映画に詰め込まれたような作品。綿毛と春が一緒にやってくる町の一年を、住民たちの何気ない日常から描いていく。人々の生活だけでなく感情までもが呼応するように、季節の変わり目>>続きを読む

ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)

3.7

死期の迫ったブンミの前に、亡くなった妻の霊や猿の精霊となった息子たちが現れる。食卓を共に囲み、彼は死に場所を求めるように森の奥へと向かっていく。

「森」が人間と自然との境界線になっているのは、日本の
>>続きを読む

ちはやふる 上の句(2016年製作の映画)

3.2

漫画の見た目に実写が合わせる必要はないけど、登場人物の設定を考慮したキャストは選んで欲しかったと原作ファンとしては思ってしまう。
ただ、スポコン要素を抑えながらも、百人一首を交えた青春ものとして綺麗に
>>続きを読む

トム・アット・ザ・ファーム(2013年製作の映画)

3.9

恋人の葬儀に出席するため、彼の実家を訪れるトム。息子の恋人が女性だと信じる母親には友達と偽り、事情を知っている兄からは最後まで隠し通せと恫喝される。どこかおかしい家族に面食らいながら、葬儀が終わった後>>続きを読む

ディーパンの闘い(2015年製作の映画)

3.8

スリランカ内戦から逃れるため、元兵士のディーパンは見ず知らずの女性と子供を家族と偽りフランスへ渡る。しかし、平和を求めて辿り着いたその場所は、日常的に麻薬取引や発砲音が響き渡る郊外の集合住宅。どこへ逃>>続きを読む

母なる証明(2009年製作の映画)

4.1

犯人が予想出来たとしても、物語自体は予期せぬ方向へ進んでいく隙のなさ。気づけば全く違う場所へ流されている、まさしくポン・ジュノ監督の真骨頂とも言える映画。
知的障害を抱える息子と過保護なシングルマザー
>>続きを読む

ひまわり(1970年製作の映画)

3.2

第二次世界大戦中にソ連の最前線で行方不明になった夫。戦後、妻は彼が生きていると信じて単身でソ連へ渡る。序盤には辿り着く旅の終わりで、彼女は心が引き裂かれるような喜びと絶望を目の当たりにする。
こういう
>>続きを読む

ぼくとアールと彼女のさよなら(2015年製作の映画)

3.6

誰とでも適度な距離を保ってきた「ぼく」と、仕事仲間の「アール」と、白血病を患った「彼女」の交流を描いたティーンムービー。ただ、一般的な闘病映画や恋愛ものとは少し違う。
あらかじめそうしたテンプレを否定
>>続きを読む

セルピコ(1973年製作の映画)

4.1

警察組織の腐敗と戦った実在の刑事をモデルにした社会派映画。冒頭、同僚から撃たれ救急病院へ運ばれるシーンから始まり、その顛末が時を遡り描かれる。
賄賂を受け取らないことから左遷された新人警官時代から、ど
>>続きを読む

たちあがる女(2018年製作の映画)

3.4

アルゼンチンの田舎町で合唱団の講師を勤めながら、裏では過激な環境活動を一人で続けてきた女性。長年願い続けた養子縁組の話が決まったことから、彼女は一つの区切りを付けるために大掛かりな準備を始める。

>>続きを読む

マーシュランド(2014年製作の映画)

3.8

ベテラン刑事と左遷されてきた若手刑事が、少女失踪事件を追うクライムサスペンス。
近年のスペイン映画はミステリーやサスペンスが特に素晴らしい完成度なんだけど、同時に示されるのがフランコ独裁政権下の出来事
>>続きを読む

世代(1954年製作の映画)

3.7

ドイツ占領下のポーランド。そんな中でも仲間達と遊び歩いていた青年が、レジスタンス活動に傾倒していく様子が描かれる。ワンダ監督の長編デビュー作にして、抵抗三部作の一作目。

興味本位でレジスタンスの仲間
>>続きを読む

列車に乗った男(2002年製作の映画)

4.6

元教師の老人と強盗を企む男の出会いと交流。対照的な人生を歩んできた二人はお互いの人生に憧れを抱き、共に過ごすことで夢の片鱗を実現させる。
自身の夢を疑似体験出来た時の満足そうな表情と、そう簡単に人生は
>>続きを読む

スノーピアサー(2013年製作の映画)

3.2

温暖化を防ぐための化学薬品が地球を氷河期に変えてしまう。17年の月日が経ち、残された人類は止まることのない列車「スノーピアサー」の乗客のみ。ただその列車は先頭車両の富裕層に支配されており、奴隷扱いされ>>続きを読む

>|