河さんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

獅子座(1959年製作の映画)

4.2

音楽家志望で40歳を間近にした主人公は未だにモラトリアムにあり、自分から何かを解決しようとしない。それは主人公が占星術を信じその結果に従っているからで、出来ることは友人に頼ることだけであり、だからこそ>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

5.0

ボクシングジムの会長の体調の悪化に対して医師は、変化が目に見えるようになればそれは既に手遅れであること、変化は落ちた雨粒が石に穴をあけていくように、少しずつ見えない形で進行していくことを伝える。

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マッドゴッド(2021年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

「oh! no!」以外のセリフがない、ストップモーションに実写とCGを組み合わせた映画。あと、CGもそうだけど、特撮には自然光がないんだと思った。だからか、過去の映画から引用したショットが多く構図も作>>続きを読む

あのこと(2021年製作の映画)

4.8

シンプルな物語構造によってサスペンスを維持する、『ゼロ・グラビティ』のようなアトラクション映画であり、そのアトラクション性によって中絶が違法だった時代のフランスで妊娠した学生の孤独な戦いを観客に体験さ>>続きを読む

メロ(1986年製作の映画)

5.0

アランレネの最高傑作なんじゃないかと思う。凄まじく良い映画だった。

夫婦であるピエールとロメーヌの元にマルセルが訪れる。マルセルは有名なヴァイオリン演奏家で、同じくヴァイオリン演奏家であるピエールと
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やまぶき(2022年製作の映画)

5.0

冒頭、黒い画面にやまぶきの花が咲くように描かれる。その絵に重なるように山が映されるが、その山は開発されやまぶきは枯れている。劇中語られる通り、やまぶきは田舎にしか咲いていないような日陰でしか育たない花>>続きを読む

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー(2022年製作の映画)

2.5

このレビューはネタバレを含みます

ほとんどワカンダと同じ背景の国との戦争の話で、1と同じく白人によって引き起こされた内戦のような話になっている。今回はエネルギーに向けた資源獲得のための政治、環境破壊が背景にある。シビルウォーからブラッ>>続きを読む

アラビアンナイト(1974年製作の映画)

4.0

生の三部作最終作として『デカメロン』『カンタベリー物語』に続く作品。これら前二作がイタリア、イギリスと舞台を変えつつも原作の書かれた時代、同じ14世紀を描いたものだったのに対して、この『アラビアン・ナ>>続きを読む

ソドムの市(1975年製作の映画)

4.2

ナチス占領下の北イタリア1944-1945年。ソドムの市をナチスによる傀儡政権だったサロ共和国に舞台を映したもの。
『豚小屋』で過去の話として間接的に語られる、権力が自分の下の存在を作り出し虐殺する(
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愛と怒り(1969年製作の映画)

4.6

実際どうなのかわからないけど、おそらく五月革命の終わりについてのオムニバスなんだろうと思う。マルコ・ベロッキオが直接的に五月革命渦中について、ゴダールの短編が五月革命もしくは愛の終わる瞬間について、ベ>>続きを読む

カンタベリー物語(1972年製作の映画)

4.0

ジェフリー・チョーサー『カンタベリー物語』をベースとした映画で、『デカメロン』に続く生の三部作二作目。

イギリス、カンタベリー大聖堂へ向かう巡礼旅行、旅行を楽しむために参加者達が語った話を、そこに居
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デカメロン(1970年製作の映画)

4.0

ボッカチオ『デカメロン』を下敷きにした生の三部作一作目。

時代は原作と変わらず14世紀のまま、舞台はナポリに変更されている。ナポリは『愛の集会』で描かれたように、貧困層が多くを占めイタリア・カトリッ
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ロゴパグ(1963年製作の映画)

4.4

世界の終わりについてのオムニバス映画。物、機械として非人間化されていく人々という主題で共通し、扱われるテーマは精神分析、労働、核兵器、消費。ゴダールとグレゴッティの作品がシンプルで一つの問題意識に絞ら>>続きを読む

イタリア式奇想曲(1968年製作の映画)

3.6

原題は「わがままなイタリア資質」みたいな意味になるんだろうか。工業化が進み、イギリスを経由してアメリカ文化が若者を中心に受容された当時のイタリア社会についてのオムニバス。パゾリーニの短編がかなり真っ直>>続きを読む

華やかな魔女たち(1967年製作の映画)

4.4

中編の間に短編を挟み込んだ5話オムニバス映画。全ての作品でシルヴァーナ・マンガーノが魔女として現れるが、魔女をどう解釈するかは作品によって違っている。5話全部面白く、特に短編二つの速度と密度が凄い。基>>続きを読む

物語る私たち(2012年製作の映画)

4.2

物語の渦中にある人々は物語ることができない、後になって振り返ることで物語は生まれる、というナレーションによって始まる。これは、故人であるサラ・ポーリーの母親の周囲の人々が、死後に自分との関係性の元物語>>続きを読む

愛の集会(1964年製作の映画)

4.6

この映画が公開された1965年時点、イタリアでは離婚が法的に認められておらず(制約の元認められるのが1970年)、1958年のメルリン法によって売春婦に対する搾取が犯罪になり、娼館が廃止されている。>>続きを読む

大いなる運動(2021年製作の映画)

3.8

仕事を見つけるため、鉱山労働者の失業デモと共に7日間歩き続けラパスに到着したエルダー達。しかし、エルダーは鉱山で働いていた時に粉塵を大量に吸い込んでいたのが原因か、高度の高いラパスの気候、気圧により肺>>続きを読む

書かれた顔(1995年製作の映画)

4.4

坂東玉三郎が歌舞伎の舞台裏へと入っていく、その舞台で演じている人物もまた玉三郎である。ここから舞台を終えた玉三郎の白塗りが落とされるまで、この映画の冒頭は溝口健二の残菊物語を模したものとなっている。そ>>続きを読む

7月の物語(2017年製作の映画)

4.6

特に2部、はっちゃめちゃに良かった 2017年の時点で見ておきかった気持ちはある

https://filmarks.com/movies/89393/reviews/141009364

続き

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みんなのヴァカンス(2020年製作の映画)

3.6

微妙だった... 無垢で寛容な童貞、女を奪う男、仲良さそうに見えて男絡みで反目する女性2人組、この監督の映画に出てくる登場人物、大体パターン同じで捉え方も一面的な印象。で、童貞はその寛容さによって報わ>>続きを読む

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

4.4

引くほど面白かった なんも考えずにIMAXで見たけどDUNEとかトップガン並みのIMAX映画だった

凋落した過去のハリウッド(西部劇)にはスペクタクルにさせられ、挙句に映画史から名前を消された人々だ
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グルーモフの日記(1923年製作の映画)

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エイゼンシュタインは演劇からキャリアをスタートしていて、自身が参加していた『Enough Stupidity in Every Wise Man』という演劇の一部として放映されていたものらしい。この短>>続きを読む

太陽の夢(2016年製作の映画)

5.0

短編が組み合わされたような『天使』と違い、全体として連続的に展開する映画で、『天使』のラストの音楽と一体化した発光する画面のあの陶酔的な感覚が60分近くずっと持続する。

カール・TH・ドライヤーの『
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掟によって(1926年製作の映画)

4.8

ゴールドラッシュによって大陸の果てのような海に囲まれた場所に辿り着き、定住した5人。そのうちの1人はアイルランド人であり召使い、労働者として、他の4人の住む古屋とは離れたテントで犬と共に暮らしている。>>続きを読む

死の光線(1925年製作の映画)

4.2

最初と最後、合計50分のフィルムが失われている。おそらく失われたほとんどが最初のものなんだろうと思う。映画の後半でおそらく最初に描かれていたストーリーの続きが入り込んできていて、その辺は何の話か全くわ>>続きを読む

ボリシェヴィキの国におけるウェスト氏の異常な冒険(1924年製作の映画)

4.0

プロテスタントであるキリスト教青年会のウェスト氏と、その召使いであるカウボーイというアメリカを象徴するような2人がロシアへと旅をする。2人はウェスト氏という名前の通り西側諸国を代表していて、2人に吹き>>続きを読む

わたしは最悪。(2021年製作の映画)

4.2

主人公は序章で医学から心理学に変え、そこから本屋でアルバイトしながら写真家を志すようになり、終章では職業写真家としてのキャリアを築き始めている。1人目の恋人であるアクセルとの出会いを除けば、序章と終章>>続きを読む

WANDA/ワンダ(1970年製作の映画)

4.0

状況に対して何もできず流されるしかない、それに対して諦めていて何の感情も抱いていない、周囲の人間たちから諦めている主人公が映画的な出来事に巻き込まれるようになる。そこで関係性や自身への肯定を得たことに>>続きを読む

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)

4.8

主人公を追いかけつつも誰を映せばいいのかわかってないように左右に揺れる冒頭のカメラが、段々と左右へ直線的に駆け抜けていく2人を捉えるようになる。

広告が主軸としておかれている。『エルヴィス』ではサー
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エルヴィス(2022年製作の映画)

2.8

このレビューはネタバレを含みます

なんか変な映画だった。

映画全体のナレーターがエルヴィスプレスリーのマネージャーとなっていて、そのマネージャーの病床での回想という形で映画が始まる。そのマネージャーはエルヴィスプレスリーを搾取してい
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イントロダクション(2020年製作の映画)

5.0

3パートに分かれた映画で、自分のことを小さい頃から知っていて自分のことが好きだろう看護師に対する演技の抱擁、そしてドイツでの彼女への本当の抱擁、そして別れた彼女への夢の中での抱擁というパートごとに存在>>続きを読む

あなたの顔の前に(2020年製作の映画)

4.4

この監督の映画初めて見た。1時間半の映画の一つの理想系のような語り口。

主人公は17歳のとき、自殺しようとする直前に目の前に広がる世界が全て美しいものに見えるという宗教的な経験をしたことから、自分の
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