うめまつさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

うめまつ

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お嬢さん(2016年製作の映画)

4.2

電車の中で団鬼六を音読(朗読ではない)されている人を見かけた事があり、ふざけてるにしては小声で淡々とでも熱心に読み耽っていらしたので、なるほどこういった性癖(官能小説を読んでいる自分の姿を公衆の面前で>>続きを読む

暗殺の森(1970年製作の映画)

4.0

完全に『暗殺のオペラ』と間違えて観てしまった。いつまで経っても兎を耳で持つ(※絶対やってはいけません)けしからん奴が出てこないな〜と思ってたらそりゃそうだ。うろ覚えとはいえ、季節も舞台も全然違うのにパ>>続きを読む

夢二(1991年製作の映画)

4.4

「僕は駆け落ちで忙しいッ!」と天ぷら蕎麦を啜る沢田研二に「絵描きなはれ」としかならん。セミフィクションとはいえ、実在の画家が主人公なのに絵を描くシーンが殆どなくて物足りない。「君をスケッチしているんだ>>続きを読む

陽炎座(1981年製作の映画)

5.0

縺れ合って熟れて爛れた性と死の香りが充満している。出鱈目が作り出す異様な緊張感。画の持つ威力の凄まじさをまざまざと見せつけられる。奇怪で妖艶で豪胆で幽玄で猥雑で奔放で濃密な粘度の高い絵が、一枚一枚血糊>>続きを読む

ツィゴイネルワイゼン(1980年製作の映画)

4.8

「僕は生まれてから一遍だってまともだったことはありませんよ」とカメラを見据えて言い放つ原田芳雄に「然もありなん」としかならん。それくらいハマり役だし、鈴木清順の作風の癖に負けじと強い印象を残していて素>>続きを読む

宇宙探索編集部(2021年製作の映画)

4.0

此処ではない何処かへ連れて行ってくれる映画だった。「酒も電車も同じだ。すぐ移動できる」みたいな呑んだくれの台詞があったけど、映画も同じかも。もっと言えばアート全般が同じ瞬間移動装置だと思う。地上で生き>>続きを読む

栗の森のものがたり(2019年製作の映画)

3.6

実りの秋を迎えた森の中を風と共に漂う弦楽器の調べ。それはあまりにも滑らかに目と耳に沁み入るが、これから訪れる厳しい寒さへの悲鳴のようにも聴こえる。どんな時代のどんな場所にも人が居る限り営みがある、とい>>続きを読む

うちにどうして来たの(2009年製作の映画)

4.0

登場人物①監禁される方
妻とお腹の子を目の前で殺されたショックから精神のバランスを崩し仕事も失い、自殺願望末期で引き篭もりの30代男性(顔:パクヒスン)

登場人物②監禁する方
初恋の君(①ではない)
>>続きを読む

恐怖の報酬 オリジナル完全版(1977年製作の映画)

4.4

狂気の沙汰とは正にこの事。撮ってる方も撮られてる方も全員気が狂っているというか、外れた箍が行方不明になっていらっしゃる。もう現場まで来ちゃったら誰も「これは流石にやめとこうぜ」とは言えない空気なんだろ>>続きを読む

さらば、わが愛/覇王別姫 4K(1993年製作の映画)

4.0

この麗しいポスターを貼りたい、という邪な気持ちで再鑑賞。初見時も圧巻の歴史絵巻と香り立つような映像美、そして何よりレスリーの魂をスクリーンに焼き付けんばかりの演技には当然見入ったのだけど、大好きな作品>>続きを読む

Bi Gan | A SHORT STORY/ビー・ガン | ショートストーリー/壊れた太陽の心(2022年製作の映画)

4.0

ビーガン監督のロマンチシズムが断片的に詰め込まれた、ノスタルジックで切ない絵本みたいな短編映画。人間に化けた黒猫が主人公だけど、ちゃんと本物も出てきてくれて大変ありがたい。のしのしと湿原を歩く姿は一瞬>>続きを読む

ギルバート・グレイプ(1993年製作の映画)

4.8

これから尊敬する人を聞かれたら《ギルバートグレイプ》と答えたい。真摯で優しくて献身的で愛情深くてでもそれに気づいてなくて、誠実で繊細で頼もしくて勇気まである。何より自分の弱さを受け入れられる強さがある>>続きを読む

マシュー・ボーン IN CINEMA/眠れる森の美女(2023年製作の映画)

4.8

醒めながら見る極上の夢。毎秒好き過ぎてどうして私はバレエダンサーじゃないんだろうと真剣に考えてしまうし「おいおい天才かよ。。」という演出振付衣装メイク美術が手を替え品を替え出て来るし、荘厳なゴシックロ>>続きを読む

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版(1991年製作の映画)

4.0

岩井俊二症候群を長らく患っていた身なので、どうしても所々『リリィシュシュのすべて』を想起せずにいられなかった。勿論時代背景も主人公達の境遇も全然違うし、並べて語るなと凡ゆる方角から怒られそうだけど(す>>続きを読む

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

3.6

全員好き勝手にめちゃくちゃよく喋る喋る喋る。江戸っ子か?心の部屋にドアの鍵(かドアそのもの)がない人たちの物語なので、生まれた瞬間から気持ちがばんばん家出し、それが周囲にどんどん影響を与え、かつその場>>続きを読む

ルナ・パパ(1999年製作の映画)

5.0

素晴らし過ぎる。この映画が生まれた日を地球全土で祝祭にすべき。一年に一度ルナパパ記念日が巡ってくる世界ならば、あともう少し生きてもいいように思える。それくらいはちゃめちゃに面白いし、描かれている事はな>>続きを読む

ラブゴーゴー(1997年製作の映画)

4.0

コロナを経て衛生観念が爆上がりした今、パン職人が腕時計したままパン捏ねてたり、癖でしょっちゅう髪の毛触ってたり(まず帽子を被って欲しい)、歌いながら品出ししてるのを愉快に見るのはなかなかハードルが高か>>続きを読む

熱帯魚(1995年製作の映画)

4.0

なんだろうこの『ボクと弟の楽しい夏休み絵日記〜誘拐犯といっしょ〜』みたいなヘンテコリンな映画は。子供2人を誘拐してみたものの、首謀者だった相方が死んでどうしたらいいかわからず、とりあえず実家に連れて帰>>続きを読む

フリーク・オルランド(1981年製作の映画)

3.2

勝手にもっと摩訶不思議で楽しい雰囲気の映画を想像してしまっていた。ちょっと予告を可愛くドリーミーに作り過ぎだと思う。宣伝としては正解だけど、私にとってはまったりとした悪夢だった。なかなかに残忍で不安に>>続きを読む

アル中女の肖像(1979年製作の映画)

4.4

「さっぱりわからないがめっぽうおもしろい」と言いたいところだけど、ちょっと支離滅裂過ぎて「まだ終わらないのか」と3回は思ったからかなり消耗した模様。でも思い返すと好きなところだらけの不思議な映画だ。画>>続きを読む

オープニング・ナイト(1978年製作の映画)

4.0

得るものに比例して体感時間が異常に長い為、かなり覚悟して挑んだカサヴェテス三作目だったけど、表面上の話だけで言うと本作が一番分かりやすくて観やすかった。主人公が女優で老いを演じるという事に苦悩しながら>>続きを読む

こわれゆく女(1974年製作の映画)

4.2

こわれゆく(こわされゆく)ジーナローランズの一挙手一投足に毎秒目が離せず、そのあまりに切迫した姿に演技である事を何度も忘れそうになった。上手いとか役が乗り移ってるという表現では生温く「凄まじい」以外表>>続きを読む

ラヴ・ストリームス(1983年製作の映画)

4.4

ジーナローランズの毛量が最高。やはりあれくらい立派な額縁(髪)がないと、ジーナ様の国宝級のお顔は収まらない。お美しさも去ることながら顔面がもはや劇場と化しており、そこでは表情筋という役者達が毎秒鎬を削>>続きを読む

マリア・ブラウンの結婚(1978年製作の映画)

4.4

親愛なるマリア様、嘆かわしい事に2023年現在、時代はまだ貴方に追いついておりません。貴方の揺るぎない強さも、艶やかな美しさも、聡明な生き方も、潔い言葉も、深く澄み切った愛情も、あまりに眩し過ぎてもは>>続きを読む

不安は魂を食いつくす/不安と魂(1974年製作の映画)

4.2

まさに日々不安で魂を食い尽くされそうなので、タイトルに吸い込まれるようにして観た。なんて素朴で優しくて可愛らしくてその分残酷な物語なんだろう。二人で象った完璧な愛の塑像は、あちこちから乱暴に伸びてくる>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

3.6

相変わらず画面の端っこにある小さなフォントまで可愛いし、色彩構成の抜かりなさにそろそろ《PANTONE® Wesley Anderson Color System™》を販売して欲しいし、セットや人物の>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

3.8

現実と反転したバービーランドを通して描かれた、パロディとコメディと皮肉とピンクてんこ盛りの純然たるフェミニズム映画で、台詞も衣装も美術も世界観の作り込みも突き抜けてて見応えは抜群だった。もちろん大軸の>>続きを読む

オオカミの家(2018年製作の映画)

4.8

凄絶。あまりの恐怖に脳が処理しきれなくて途中でシャットダウンしそうになった。がんばれ私の重たい瞼。これを人間が意図して創作しているという事実すら忘れそうなほど、禍々しい悪夢の原液が直接脳に流し込まれる>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

もう受け継がれることのない当代きりの職人技が随所に詰め込まれた、懐かしの豪華幕内弁当といった趣きで、凄いんだけど味が偏ってるなぁとか、前にもこれ長靴いっぱい食べたなぁとか、万人受けするあのおかずは入っ>>続きを読む

⻘いカフタンの仕立て屋(2022年製作の映画)

4.6

眼差しで紡がれた映画だ。3人ともなかなか想いを口にしない(できない) 。なので誰かに向けられた感情は見つめる視線にしか現れない。その余りにも密やかな三本の想いを撚って艶めく糸にして、ひと針ひと針丁寧に>>続きを読む

リトル・マーメイド(2023年製作の映画)

4.0

欲を言えば王子が人魚になるエンドがそろそろ観たいけど、大筋は変えずにアニメ版の脆いところを上手くカバーして現代仕様に仕立て直した、老舗Disneyの職人技を感じさせる実写化だった。アリエルの行動はアニ>>続きを読む

ネッド・ライフル(2014年製作の映画)

3.8

『戻ってきた。スパイの国からハートリーが帰ってきた。続け!信者たち!ヘンリーの元へ行こう!』(by 乙事主様)な三作目。一作目も変化球ではあったけど二作目で大いに軌道を離れ、三作目でようやく純正ハート>>続きを読む

フェイ・グリム(2006年製作の映画)

4.0

ハートリーの2時間スパイサスペンス。続編だけど続編じゃない、さよならだけどさよならじゃない『ヘンリーフール』の後日談。やたら話が込み行ってるけどめちゃくちゃ自由で、前作からの急激な転調に面食らってるう>>続きを読む

ヘンリー・フール(1997年製作の映画)

3.6

私も今すぐ詩の神の奴隷になって8時間労働から解放されたい。ゴミ処理場から始まる冒頭、サイモン(ジャケ写の眼鏡君)の登場シーンにDisneyのウォーリーを思い出した。諦念に満ちた眼差し、笑い方を忘れたよ>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

4.6

二人だけの乗り物を作ってあげたい。強くて優しくて安全でふかふかで誰にも邪魔されなくて何処にでも行けて永遠に壊れないネコバスみたいなやつ。呼応し合って光りだした二つの清らかな魂が誰にも踏み躙られずに、何>>続きを読む

FLIRT/フラート(1995年製作の映画)

3.6

三カ国で繰り広げられる浮気者達の恋愛遊戯。開始早々致死量のお洒落に見舞われるので、好きなのに何故か無性に恥ずかしくてなって一時停止してしまった。洒落た人達が気取った台詞しか吐かない世界へようこそ。>>続きを読む