vivoさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

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令嬢ジュリー(1951年製作の映画)

3.0

尊厳を傷つけられた者たちが紡いでゆく負の感情の連鎖が憂鬱な物語。傷つけられたからこそ傷つけることに鈍感になってしまい、また傷つく人が生まれてしまう。その連鎖を断ち切る強さを持ちたいと思わされた。この時>>続きを読む

宮松と山下(2022年製作の映画)

3.0

もし人生で役を失ってしまったと感じる時が来たとしても、また次の役を演じればいいという、ドライだが小さな希望を感じさせる物語だった。そのメッセージを支えつつ、小さな驚きも提供してくれる、フィクションとノ>>続きを読む

ミステリと言う勿れ(2023年製作の映画)

3.0

幼い頃に刷り込まれたことは、呪いにも御守りにもなるという物語。できるだけ御守りを残したいものだ。結果的に結構もったいない役者の使い方をしているが、怪しい人を増やすことには成功していて巧いキャスティング>>続きを読む

暗殺の森(1970年製作の映画)

5.0

普通であることへの強迫観念に抗えず、自分にとっての本物を遠ざけてしまう男の話。とにかく画面の力が強い。大胆に配合された光と影が生み出す力強い美と、精緻に配置された人間たちの動きが交響曲のように奏でるリ>>続きを読む

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

4.0

混沌と交り合う善悪、神話的な要素、印象的な機械や小道具や生物、まさにスターウォーズ的な世界の敷き方なのだが、それが良い。これからこの世界で繰り広げられる物語にワクワクさせられる。砂漠という舞台の個性と>>続きを読む

ある閉ざされた雪の山荘で(2024年製作の映画)

1.0

古典的なミステリーの構造にもうひと捻り加えたアイデアが面白いし、旬の若手俳優が揃っているので画面も華やか。しかし緊張感がイマイチ足りないのと後半の冗長さが残念。

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

5.0

まさに人を優しくさせる”哀しい面白さ”に溢れた映画。大小の生き辛さを抱える人たちが、不器用に愛情の欠片を与え合いながら互いに癒されゆく様子に心が和んだ。全ての人物が愛らしく見えたし、世界を穏やかに彩る>>続きを読む

ウエスト・サイド物語(1961年製作の映画)

3.0

出会ったばかりでお互いにひと目惚れして脳内お花畑状態になる主人公たちには共感できなかったが、キレの良いダンス、メロディとリズムが心地よい歌曲の数々、そして金網や洗濯物などの小物を効果的に配して街の雰囲>>続きを読む

Saltburn(2023年製作の映画)

4.0

バリー・コーガンの個性が生み出す唯一無二の主人公が強烈な印象を残す。サイコでありながら全ての喜怒哀楽を本当に全身で感じているという、矛盾を孕む人間像に説得力を与える見事な存在感と演技だった。夜の庭、浴>>続きを読む

巴里のアメリカ人(1951年製作の映画)

2.0

ジーン・ケリーのミュージカル俳優としての才能を堪能する映画。表情を含めた全身の表現力に惚れ惚れした。さらにレスリー・キャロンのバレーダンスとオスカー・レヴァントのピアノ技にも感嘆。特別な才能を持った人>>続きを読む

パラレル・マザーズ(2021年製作の映画)

3.0

ペネロペ・クルス演じる主人公が魅力的。強い意志と正義感とと家族愛を持ちつつ、人並みに誘惑や不安には弱く、それでも正しくあろうとする姿が愛おしかった。化粧や衣装によってガラッと雰囲気が変わるダイナミック>>続きを読む

市子(2023年製作の映画)

4.0

とにかく可哀そうな話。常に目が離せない緊張感を漂わせる杉咲花と、それを受ける若葉竜也の自然な佇まいの相性が抜群で、役者に見入る作品だった。二人とも泣きの演技がすごくいい。

隣人X 疑惑の彼女(2023年製作の映画)

2.0

冒頭のミステリーとしての煽りと、その後に続く緩やかな恋愛劇のバランスがどうにも悪く感じてしまい、見ていてもどかしかった。もっと静かな人間ドラマを主体にして、その水面下に個性的なミステリー要素が潜んでい>>続きを読む

正欲(2023年製作の映画)

4.0

何らかの欲があるから人は明日も生きていたいと思う。そして、世の中には認められている欲と認められていない欲がある。社会秩序を損ねうる欲は犯罪と分類され、それ以前に、理解すらされない欲もある。「多様性を尊>>続きを読む

山河遥かなり(1947年製作の映画)

3.0

原題「The Search」ということで、誰かが誰かを必死に探す姿が織りなす物語になっている。探すという行為の動機である愛情の存在に心が温まるし、映画の流れ的に出会えると分かっていても、出会えたシーン>>続きを読む

blank13(2017年製作の映画)

3.0

タイトルやエンドロールの使い方含め、きれいに無駄なく構成された映画だった。主体であるお葬式のシーンは、もう少し緩めるとコントになってしまうギリギリのラインを保っていたが、突然コントに転んだらどうしよう>>続きを読む

フレンチアルプスで起きたこと(2014年製作の映画)

4.0

気まずい瞬間を散りばめたリアリティのある会話劇が楽しい。プライドは高いがそのプライドは女性に認められることで成り立っているという、男性にありがちな精神的な脆さが滑稽かつ辛辣に描かれていた。プライドの支>>続きを読む

カンダハル 突破せよ(2023年製作の映画)

1.0

愛国心や信仰が戦う動機になっている人たちの戦いは、それぞれに正義が異なるから終わることがない。そこに、金を動機に参加する人も現れるから、さらに終わらせることが難しくなる。そんなことを思い出させるごちゃ>>続きを読む

オン・ザ・ミルキー・ロード(2016年製作の映画)

4.0

クストリッツァらしい残酷と楽観が入り混じった寓話的世界が心地よい。動物を交えたシーンの数々は魂の循環を感じさせるもので、物語が進むにつれ、循環を通じて共有される魂として、動物たちの中に人間と同じ魂を感>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

4.0

視点を重ねるたびに物事や人物の見え方が変わってゆくのがおもしろかった。気持ち悪く見える人間も、不気味に見える人間も、別の角度から見れば違って見えるわけで、狭い角度から見た姿だけで人の個性を決めつけるこ>>続きを読む

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー(1984年製作の映画)

3.0

全体的に静けさが漂う作品だったが、あえてもっとカジュアルで派手なノリにした方が、物語の核となる哲学的テーマとの間により心地よいコントラストが生まれていたような予感がする。水たまりに映る景色、真横を予期>>続きを読む

テオレマ(1968年製作の映画)

3.0

これは奇作。人たらしの天才が家族まるごとたらし込む話が、するりと哲学的な問いかけに昇華して、真理のようなものに触れてしまった時の人の反応が示されている作品になっていた。芸術や性に逃避したり、許容できず>>続きを読む

真夜中の虹(1988年製作の映画)

3.0

淡々さとハードボイルドな空気感が融合した世界観がなかなかいい。此処ではない何処かという場所が持つ希望と、その裏返しにある、動くことができないことの絶望を感じた。

英雄の証明(2021年製作の映画)

3.0

作為だらけの現代で、不作為の善意が如何に無力であるかということを見せられた。全ての物事に作為を感じてしまうのは現代社会の病なのかもしれない。人の行動の大半は不作為だという事実を忘れないようにいたいもの>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

3.0

キャッチーな題材でジェンダー問題をカジュアルに描いた楽しい作品。誰かが誰かに依存することが当然とされている状態は、依存する側・される側双方に不自由感を与える。しかしジェンダー問題以前に人を不自由にする>>続きを読む

雨月物語(1953年製作の映画)

3.0

金と色と名誉が人を惑わせる様がシンプルに描かれた、多くの昔話にも共通する日本文化の根本的な倫理観が伝わる作品。群像劇的な構成が巧みで最後まで飽きずに物語に引き込まれた。

オペレーション・フォーチュン(2023年製作の映画)

3.0

スタイリッシュな画面展開と台詞回し、そして、キャストの個性を上手く活かしてカッコよく且つ可愛らしいキャラクターを生み出すテクニックがガイ・リッチー印。特に終盤で役割が変わるヒュー・グラントがいい味を出>>続きを読む

ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語(2023年製作の映画)

3.0

ウェス・アンダーソンと芸達者な役者たちによる、肩の力が抜けた、しかし巧みな短編。息つかせぬ場面展開と台詞の応酬が見事で、演出と演技の力にただただ圧倒された。

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)

4.0

破滅へ向かうことが暗示されている男が転がり落ちるだけの物語だが、飽きさせない展開で楽しかった。そしてそれ以上に、風景、美術、画面映えするキャスト達が合わさって生みだされた陰鬱ながら美しい世界への没入が>>続きを読む

八月の狂詩曲(ラプソディー)(1991年製作の映画)

3.0

日本人にとって夏は戦争を思い出す季節。それが、死者を想う季節と重なっていることに不思議な運命を感じ得ない。夏は、痛みを知り、優しさを育む季節なのかもしれない。他人への素直な共感を重ねながら、静かに優し>>続きを読む

眠る男(1996年製作の映画)

3.0

淡々と映し出される日本の原風景がただ美しく心が休まる。その世界の中心には昏睡状態の男がいて、その世界を眺めていると、睡眠と昏睡と永眠の境が曖昧になる。ゆっくり流れる大きな時間の中のほんの一瞬にだけ自分>>続きを読む

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)

4.0

同じ出来事を複数の視点から語る構成だが、事実認識自体に相違はなくても、その解釈に微妙な差異があることが巧みに表現されている。語り手が入れ替わるごとに共感できる対象が変わり、ある時点においては、決闘者双>>続きを読む

日本の夜と霧(1960年製作の映画)

4.0

とにかくいやーな気持ちを残すとんでもない結婚式。滑舌の悪さや噛みまくりの台詞回しに少し驚いたが、結果的にその稚拙さが、論を論で返すことの虚しさと滑稽さを絶妙に表現していた。心なき弁の立つものが集団を支>>続きを読む

恐怖の報酬 オリジナル完全版(1977年製作の映画)

4.0

恐怖の質が独特。精神的ストレスを与えるディティール描写、始終鳴りわたる不穏な高音BGM、そして容赦なく非常な展開が独特のホラー感を醸し出していた。強烈な恐怖感と画的な美しさが同居した吊り橋のシーンはこ>>続きを読む

男はつらいよ(1969年製作の映画)

3.0

寅さんのキャラクターが、圧倒的なチャーミングさは他のいろんな人間性の問題を凌駕して人を魅力的にすると思わせてくれる。そして、チャーミングな人間は周りの人間のチャームと幸福感をも引き出してくれるものだと>>続きを読む

鉄男 TETSUO(1989年製作の映画)

5.0

とても長時間は見ていられないほどの圧力を始終放つ映像が凄い。相当な労力を想像せざるを得ない細かい美術やストップモーションに、自分の中に存在する世界をとにかく外に出したいという制御の効かない熱量を感じた>>続きを読む