八咫烏

月とライカと吸血姫の八咫烏のレビュー・感想・評価

月とライカと吸血姫(2021年製作のアニメ)
4.0
冷戦時代の宇宙開発競争がテーマのフィクション。吸血鬼は出てくるが、ファンタジーより史実に寄せた作品。

宇宙飛行士候補生のレフが世話を命ぜられたのは、初の有人宇宙飛行(それまでは犬を乗せていた)に先駆け、犬の代わりに連れてこられた、吸血鬼の少女イリナだったーー
吸血鬼は人間以下とみなされ、迫害されているこの世界で、レフとイリナは宇宙飛行士を目指す。また同時に2人が人種差別にどう立ち向かうかも描かれる。
宇宙開発競争とは言え、アニメなだけあって(原作にはそれなりにあるんだろうけど)難解さは無く、ストーリーも分かりやすい。

作画はヌルヌル動くとか、今どきの神作画といった類いではない。
でもこの時代感を大切に(時代考証も含め)作ったのが伝わるし、製作陣の愛を感じて良かった。
色彩や背景がクラシカルで、カメラワークや構図がそれに拍車をかけている。
レフやイリナが着ている訓練着や制服、乗り物やロケットの造形もレトロ可愛い。

cvの顔ぶれもこの空気感を壊さず、皆ハマっていた。特にイリナ役に林原さんを起用したのは、歴史ドラマに重厚感を与えるという意味で良い方に作用したと思う。

エピソードや結末が予定調和だと言えばそうかもしれないが、そんなところも含めて、50年代、60年代の映画的で悪くない。とは言え途中ハラハラもあってそれなりに盛り上がった。
たぶん自分はこの世界観が好きなんだと思う。楽しかったし、キュンとしたし、感動もした。
2人の吸血描写(未遂も)も、ラブシーンが規制されていた頃の映画を連想させてエモかった。

opがドラマチックで良いのだが、edもまたいい。ずっと歩いているとか、ただ乗り物に乗ってるとかは好きなパターンで、大抵好きになる。
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