FRANCIS

スター・ウォーズ:ビジョンズのFRANCISのレビュー・感想・評価

3.5
7つのスタジオ、9つのエピソード。日本アニメが描く、語られざるSWの物語。

ルーカスフィルム製作の『クローン・ウォーズ』ほかカートゥーン作品にも下請けとしては参加したものの、日本のアニメスタジオが初めて主体なる異色な和コンセプトの短編群。

第一のエピソード、「The Duel」は黒澤明の世界観を忠実に反映した朱色のエピソード。敵側ダークサイダーの声の英語吹替はルーシー・リューでラスボス感が凄い。物語のその後が『Ronin』として小説化するなど更なる世界観の拡張にも期待できる。

続く『村の花嫁』は、英語吹替に福原かれんを起用し、日英二か国語どちらでも違和感なく楽しめる。近年の社会的風潮を受け、他の作品でもアジア系の俳優が声を当ててるのも好感を持てる。

対して、『のらうさロップと緋桜お蝶』は琉球古武術に用いられた釵をモデルにした短剣がキーアイテムなど、ディテールに拘った一作(ロップはSW黎明期のマーベルコミック誌に登場したウサギ型種族レピ)。帝国軍の占領、開発とその歪み、地元意識とムラ社会的な血統感など沖縄(の抱える問題)がモチーフにした作品だけに展開の駆け足感が気になり、やや惜しい。

最も野心的な作風が印象的な『タトゥイーン・ラプソディ』は、ボバ・フェットやジャバら映画キャラが唯一登場する作品も、肝心な歌が日英どちらもイマイチでジェイの元ジェダイ設定も生きていないのが残念。

多様性を持たせる為に複数スタジオによる分担をした割に、ジェダイやシスがモチーフとなり似たような作風になったのは否めない。作品毎に当たり外れはあるものの、それぞれ本篇とは無関係の非正史作品という縛りの緩さから続三部作を含めたSWのテーマ性や本質を体現している興味深い。

20分以内といった時間の制約からパイロット版のような印象は否めないものの、幾つかはその後の展開が気になり後続に期待したい部分もある。
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