ブタブタ

PLUTOのブタブタのレビュー・感想・評価

PLUTO(2023年製作のアニメ)
5.0
「AIは素晴しいけど其れを使う人間はゴミ。逆もまた然り」
何かAIって三年くらい前に急激な技術革新があって「AIを使えばレンブラントやピカソの新作絵画も《再現》出来てシェークスピアやカフカの新作だって読める」とか言ってた頃がピークで、AIはあれから更に進歩してるに関わらず出来る事よりも出来ない事の方がハッキリして来て早くも下火になってると言うか、夢みたいな万能アイテム、《神》みたいに崇めて奉ってのがバカみたいって最近思うんですが。


手塚治虫『鉄腕アトム』の傑作エピソード『地上最強のロボット』を長編としてリメイクした浦沢直樹『プルートゥ』全8巻をダイジェストにせずNetflix全8話で完全アニメ化って考えうる限り最高のアニメ化。
コレがまたこないだのNetflixガメラみたいな3Dカクカク人形だったら最低って事になったけど。
因みにアニメ制作が手描きからコンピュータに移ってからの最大級の失敗、弊害って例の3Dカクカク人形キャラクターだと思う。

アトムは原子力=原子爆弾の暗喩であり、プルートゥ=プルトニウム=水素爆弾であるから『地上最強のロボット』は原爆VS水爆って人類が手にした最強兵器による頂上決戦を「ロボット」って形で現してる。
しかし最終的にボラー=反陽子爆弾て架空の兵器を倒す為にアトムとプルートゥは手を取り合うから手塚治虫先生はどんな事になっても最後は人類の叡智は地球を救うって希望を提示したかったのかも知れない。

浦沢直樹先生は元々漫画家でなく編集者になりたかったと前にNHKインタビュー番組で語ってたけど、『プルートゥ』はその浦沢直樹の謂わば《編集家》としての才能が炸裂した作品だと思う。
浦沢直樹連載漫画作品っていつも途中で飽きるのか次の作品の準備に入るのか明らかにやる気がなくなり尻切れトンボで終わるのが常で、しかし『プルートゥ』は完璧なストーリーが初めからあるから、其れを膨らませたり肉付けしたりしたり更に少年時代の浦沢直樹の脳内補正迄加えた謂わば『シン・地上最強のロボット』だから面白いのは当然。

後は⚠︎ネタバレ注意⚠︎で













ゲジヒトを主人公にしたSFサスペンス、テクノスリラーであり《7人のロボット》達の群像劇。
アトムが前面に出て来るのはあくまでもクライマックスからで、視点が一話ごとに次々と変わるこれって総合小説の描き方だと思う。

ウランが読む『ピノキオ』の絵本からも本作のテーマはピノキオだってハッキリ明言してる。
石ノ森章太郎の原作漫画『人造人間キカイダー』の最終話ではキカイダー・ジローは悪魔回路即ち《悪い心》が入った事で人間になってしまうという実に苦いラストで、『プルートゥ』も破壊されたゲジヒトの記憶チップ内の《憎しみ》によって復活したアトムが本来嘘がつけない筈のロボットなのに「嘘をつく事が出来る様になる」
これはやっぱりアトムが人間になってしまったというキカイダーと同じ苦いラスト。

『ブレードランナー』のレプリカント=意思を持ったAIは遂に人間を超えてしまい自己のアイデンティティについて苦悩する。
『アトム』『プルートゥ』も描いているテーマは同じで、AIが単なる電子頭脳を超えて意思や感情を持ちどんどん人間に近付きやがて超える日が来た時、シンギュラリティ(技術的特異点)を迎えて世界から戦争や貧困といった人類が解決出来なかった全ての問題を解決してくれるんじゃないかって夢の様な未来を想像して其れを漫画にしたのが『鉄腕アトム』手塚治虫であり『ドラえもん』藤子・F・不二雄であり更に石ノ森章太郎。

『プルートゥ』は人間とロボットの相克と「憎しみからは何も生まれない」という普遍的で哲学的なテーマ。
悪のロボットが主人公アトム含む7体のロボットを次々と倒していく往年のジャンブ漫画的なプロット。
其れを最高水準の作画でアニメ化と極めて理想的なアニメ化だった。

あとそれから手塚治虫AIプロジェクトって生成AI使ったTEZUKA2020なる企画で出来上がった手塚治虫漫画モドキが紛うことなきゴミで、これだったら田中圭一先生に描かせた方が早いし安いんじゃないのか(笑)って思ったけど性懲りも無くTEZUKA2023なる物が、今度はAIにアイデア出してもらって其れを元に漫画家が描くって明らかにトーンダウンしててAIって物の進歩や可能性を真っ向から否定する様な、手塚治虫の頭脳・才能・先進性から完全に逆行してる様な有り様で見てて悲しくなる事しかり。
富野由悠季監督が「AIを神様みたいに思ってるバカは死ね(要約)」って言ってたけどやたら「( ゚∀゚)o彡°AI!AI!」言う人間てアーティスト・政治家含めてバカみたいのしか居ないのは何故なんだろう。

天馬博士が造った、99億人の人間の頭脳・思考・人格をトレースした完璧なるロボット《ゴジ》って正に現時点でのAIとやってる事は同じでそこに《感情》が加わらないと「目覚めない」=意味無いって、無数の思考なりデータ也を一瞬で解析出来ても出て来るのはあくまでも「過去のトレース及びリミックス」で新しい閃きや未知の可能性はやっぱり《人間》がやらなきゃならないんじゃないのって言ってるみたい。
其れこそがAIAI言ってるバカ共に対する皮肉と言うか、AIはあくまでも道具であり其れを使う人間はAIがこの先幾ら進化しても戦争や貧困あらゆる責任からは人間は逃れられない、シンギュラリティ何か来ないって事も言ってるのかも。
(つまりアトムやドラえもんは現実には現れない。当たり前かも知れないが)
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