長内那由多

マスターズ・オブ・ザ・エアーの長内那由多のレビュー・感想・評価

-
E2まで。
『ハイジャック』『窓際のスパイ』らに続くAppleTV+の娯楽路線で、オースティン・バトラー、カラム・ターナー、バリー・コーガンら若手スターのアンサンブルも楽しいが、アメリカ軍の爆撃機部隊が主人公なら、行き着く先はドレスデン大空襲になるのか。E2では標的へのピンポイント攻撃から昼間の作戦にこだわる米軍と、4年に渡る戦闘から夜間の空襲を訴える英軍が描かれ、主人公たちも夜間爆撃の戦略的な有効性に気付き始める。青春ドラマのような体裁で見せる本作だが、彼らが取り返しのつかない虐殺に加担することになるのでは…。

E3
オースティン・バトラー目当てで見ていられるが、空を飛ぼうがアフリカに降りるようが、造り物の背景だらけ。E4まで担当する監督キャリー・ジョージ・フクナガも人選ミス。1話丸々アクションのE3は敵の姿をオミットするなら、潔く空戦活劇で魅せてほしいところ。

E5
ほとんど『コールオブデューティ』のプレイ動画を観ているような気分で、開き直って我が家のスピーカーのスペックを楽しむ事にしている。『バンド・オブ・ブラザース』にはじまる群像劇連作だが、シーズン半ばで看板が掛け変わり「スター俳優とは」という気分。

E6
空戦アクションなしのE6に入ってようやく面白くなった!“あの声”が聞こえた瞬間、思わず泣いてしまった。監督はアンナ・ボーデン、ライアン・フレック。ローゼンタール役のネイト・マンは今後、何かヒットが出ればブレイクしそうな雰囲気。

E8
監督はNetflixの秀作『マッドバウンド』のディー・リース。黒人パイロットだけで編成された小隊が登場。これだけでいくつも語れそうなテーマだが、1つも2つも足りない印象。今年の大作TVシリーズは『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』まで当たりがなさそう。

E9
実話だからと言われればそれまでで、同時代性に欠けた空虚で無批判な戦争ドラマ。スピルバーグの政治性についてとやかく言う気はないが、終盤、ロージーが出会うユダヤ系の老人が「パレスチナへ行く」と言っているのが全てを表している(字幕では省略されている)。
長内那由多

長内那由多