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ブラック・ミラー シーズン6のヒムロのレビュー・感想・評価

ブラック・ミラー シーズン6(2023年製作のドラマ)
4.5
・ジョーンはひどい人
ジョーンはある日、配信サービスストリームベリーで「ジョーンはひどい人」という自分をモデルにした映画が配信されているのを見つける。
自らの酷い行いが婚約者や会社の同僚に見られたジョーンは全てを失ってしまう…。


いきなりNetflixのセルフオマージュでトップスピードのスタート。
自信がほぼリアルタイムでドラマ化されていく恐怖を描きつつ、疑問に思える部分が最後に回収されるのは見事。
入れ子構造が非常に見ていて面白い。
ED後まで遊びたっぷりなのも嬉しい。


・ヘンリー湖
デイヴィスとその恋人ピアは映画制作のためにデイヴィスの実家へと訪れる。
街は過去に悲惨な殺人事件が起こっており、そのせいで観光客が訪れず寂れていた。
警官であったデイヴィスの父も亡くなったその事件を知ったピアは、この事件を題材にドキュメンタリー映画を撮ろうと提案するのだった。


まぁこうなるだろうなという所へと落ち着いていって予想通りの展開だったが、ラストが非常に面白かった。
母の選択から事件のその後、映画のその後まで描かれるのは展開的にとんでもなく重くなって非常に面白い。
地下でのパーティの様子は最高。
楽しそうで全員ビジュアルもいい。


・ビヨンド・ザ・シー
デヴィットとクリスは宇宙飛行士。
2人で長期間のミッションに携わっている彼らだが、この時代の宇宙飛行士にはある娯楽があった。
それは自身が寝ている間、地球の自分そっくりのレプリカに意識を移せること。
しかし地球のデヴィットとその家族が過激自然派ヒッピーに殺されてしまう…。


これぞブラックミラーという超傑作エピソードだろう。
1時間20分あるが目が離せない。
クリスの体を使って日常を取り戻していくデヴィットの邪悪さは、ただの邪悪ではなくしょうがないとさえ思える辛すぎる境遇なのがまた心に来る。
そしてクールすぎるラスト。
どこかでクリスもああはなると思っていたがエンドロール直前のあのテーブルのシーンは見事すぎた。
2人しか乗ってない宇宙船ってなんだよって感じだが、2人しかいないと言うことはどちらかが欠けたら必ずもう片方も死ぬという事。
そこを感じさせるあの終わり方は見事の一言。


・メイジー・デイ
自分の撮ったスキャンダルで自殺者が出たことをきっかけにパパラッチを引退したボー。
しかし人気女優のメイジー・デイが撮影中に失踪した事件が起き、高額の懸賞金話がパパラッチ界に流れる。
金がどうしても必要なボーは、メイジーを追い始めるのだが、彼女には秘密があった…。

どうしたブラックミラー!
近未来SF的な世界観は使いつつも、こういうファンタジーや非現実な展開は使わないのがブラックミラーだったんじゃないのか!?
マスコミの醜い部分をテーマにしているのは非常に共感できるんだが、話が薄すぎる。
これじゃただのモンスターパニックだろ。
「メタルヘッド」の次に駄作だと思う。
あと尋常じゃないぐらいフラッシュがキツいので光てんかんに注意。


・デーモン79
インド系の女性、ニーダ。
靴屋で販売員をしている彼女は、人種のせいで同僚やオーナーからのあたりがキツい。
しかしひょんなことから呪いの札に血をつけてしまい、悪魔に取り憑かれてしまう。
「3日で3人を殺さないと世界が滅びる」と脅されたニーダの決断は…?


これも悪魔という異色なテーマながら話自体が非常に面白い。
親しみやすいキャラの悪魔に殺したくなるような脇役達。
ニーダを応援したくなる気持ちが通り越して、躊躇するニーダに「やれよ!」と言いたくなってしまう。
終盤、ガープが消えてから果たしてガープの言葉が嘘か本当かハラハラさせる展開がたまらない。
全部やり遂げたのに嘘ってパターンも全然あったのだが、そうじゃなくこの終わり方にするのがニクい。
ガープの強いキャラ一本でかなり得している作品なので、最後まで彼を嫌いにさせない展開にしたのは正解だと思う。
しかし自分でメタルヘッドを出すあたり、つまんないって自虐ネタにしてるんかな…。



全体的には5本という少ない本数は残念だったが、メイジーデイ以外は超満足で再びブラックミラーが見られたことに感謝したい。
しかし近未来SF的な世界観が好きだったし、それがルールのようなものだと思っていたのでそこを崩してしまったのは非常に残念。
ラスト2本は正直別の作品でやって欲しかった。
とはいえコロナが明けるまで作らないと言っていた新シーズンが配信されたことは喜ぶべきことであり、また次のシーズンも期待して待ちたい。
ヒムロ

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