マグルの血

anoneのマグルの血のレビュー・感想・評価

anone(2018年製作のドラマ)
4.6
どこか足りない、欠けている人々が偽札の元に集まり家族になる話。

坂元裕二脚本のファンを公言しておきながら観てない作品が多すぎまして、
2024年一発目は本作とさせて頂きました。

氏のシリアスな側面を発揮したと思われる本作。主要キャストの生い立ちがあまりにシリアス。挫折、喪失、直面する氏、失踪。並べていくだけでも暗い気持ちになるようなプロフィールを持ったキャラクター達は、偽札をきっかけに偶然集いお互いを補いあっていくのです。何でリアルタイムで観てなかったんだろ…。

特筆すべきはやはり一つ一つのセリフの温度感。独特な感性から産み出されたと思われるワードセンスは共感を得ながらも洗練されている。日常のほのぼのとしたやり取りから人生観に至るまで、どこからひねり出すんだと驚かされるのが坂本作品の好きなところ。本作も余すことなく繰り出されます。

キャストの演技も凄かった。明るく振る舞う中にもどこか影があったり、冷たく感じる中にちょっとした優しさがあったり。視線や仕草の全てに何か意味があるんじゃないかなと勘ぐってしまう演者のパワーに圧倒。

と大袈裟に言ってしまったものの、サスペンス調ヒューマンドラマとしては上位に入るくらい好きだったなあ。


辻褄が合わないファンタジーな部分は、偽札に関わる人たちの「周囲の人間」を表面的に醜悪に描くことで、いい感じにマスキングされてフィクションとして受け入れられるレベルに昇華しているように感じます。

特に持本と青羽のエピソードは非常に泣けました。喪失する悲しみの描き方はどこかズルいけど正直グッとくるものがあると思います。
あ、あと火野正平はエグい。

続きが気になるけど、繰り返し観るには勇気がいるって感じです。今のところ坂元裕二脚本は「カルテット」がダントツなんですが、本作も観て良かったと私は思えたので、このまま他の作品もチャレンジしてみようと思います。
マグルの血

マグルの血