PaperCup

それでも僕らは走り続けるのPaperCupのネタバレレビュー・内容・結末

それでも僕らは走り続ける(2020年製作のドラマ)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

全く畑違いながら、それぞれに稀少なキャリアを持つハイスペックで人間的にもまっとうな美男美女が出会い、自然当然に惹かれ合って、多少の紆余曲折を経つつ次第に関係を深めていく話。韓ドラあるあるの極端設定のわりに格別ドラマチックなことは起こらず、二人のリアルで順当な恋愛過程を、ありきたりでない丁寧な会話を積み重ねて描いている。その過程を興味深く楽しめるかどうかだと思うが、観ている間はそれなりに楽しんでいたものの、終わってみれば、深く心に残るような場面は特になく、ラブコメというほど笑える部分もなく、それほど響かなかったな、という印象。恋愛現役世代だったら、リアルで自然な会話を通して進展する二人の関係にもっと当事者的な興味を持てたのかもしれない。あるいは、美男美女が順調に仲好くなるだけの話とも言えるから、共感度低かったとか?多分、シンセギョンさんの声があまり好みじゃない。
 『ミセン』でチャングレに心を鷲掴みされたようなイムシワンの演技をどこかで期待していたけれど、キャラクターも違うし、ドラマのタイプも違うので仕方ないかも。強いて言えば、「私を好きになって」と言われて「もう好きなんだけどな」と答えるイムシワンの横顔に最も心を動かされた。ベストシーンに上げたい。最もチャングレ味あったのかも。
 サブカップルのパートは普通の韓国ドラマのラブコメという印象。ソダナを演じているチェスヨンは、キャメロン・ディアスを意識してる?

スポーツ界の暴力隠蔽体質の告発、女性蔑視発言への断固とした抗議、性的多様性への理解、Love Yourself など、2020年らしいトレンドを取り入れた社会的メッセージが盛りすぎなくらい盛り込まれているところが、イムシワンの選んだ作品らしいと感じた。女性を可愛がったり庇護したりする対象としてではなく、対等な一人の人間として尊重しているのは言うまでもなく、料理したり掃除したり洗濯物を畳んだり、家事をする姿が自然で板に付いているところなどにもメッセージが込められていると思った。男性だってみっともなく泣いてもいいんだ、というのもその一つだったのかも。といっても、イムシワンなので美しいのだけど。常々韓国ドラマを観る時に引っ掛かっていた、男性が女性の腕を無理矢理引っ張って力ずくで連れて行こうとする行為にはっきりNGを出してくれたのはグッジョブ。しかし、オミジュにも言えるけれど、キャラクターが理念的に作られ過ぎていて不自然な感じがするのかも。
 オミジュに関しては、境遇で同情を買う描き方をしていないところ、セレブなキソンギョム一家やソダムたちと比べて自分を低い立場にある者と見なしていないところが、これまで観たこの手の韓国ドラマの格差カップルのヒロインと違ってよかったと思う。でも、お酒を飲みすぎるのと、話に酒の力を借りすぎるのはよろしくない。それにしても、韓国ドラマというのは、どうしてこんなに極端な境遇 (セレブな毒親vs 両親がいない等 ) の設定が多いのだろう?
 イムシワンssiには等身大の重くなくカワイイ恋の話もいいけれど、是非そのうち大人の大メロドラマにも挑戦して頂いて、恋に溺れて理性を失ってしまう美しいイムシワンとか、切ない恋に苦悩する美しいイムシワンとか見てみたい、などと欲望が妄想する美貌と天分입니다。

ロケ撮影が多く、お天気にも恵まれて韓国の様々な場所の秋の映像が美しかった。家や室内も何気に凝っていてお洒落。予算潤沢だった印象。ファッションも懲りすぎなくらい凝っていたけれど、レースの時の黒の上下が一番似合っていてカッコよかった。邦題はランオンでよかったのでは。
PaperCup

PaperCup