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すずめの戸締まりのRISAのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.5
ー新海監督の描く、温かい問題作。

「君の名は」「天気の子」に続く本作。
どんな物語なのか気になっていたけど
地上波でようやく、、

いやあ、すごかったな〜

本作でも新海監督ならではの
美しい映像の数々と日本の等身大の町並みに
(田舎町の美しさと都心のリアルな描写ね)
壮大なスケールの物語。
そして何より物語の中盤から終盤に
畳み掛けてくるスピード感。

「君の名は」や「天気の子」もそうだけど
新海監督の作品って
日常とSFの絶妙なラインをついたり、
人間の親切さと薄情さの演出だったり、
温かいアニメーションのようで
大きく鋭い問題作だったりするのよね。


ここからネタバレになってしまうと思うけど。






本作のテーマにもなっている震災。
2011年の3.11から10年以上経った今、
被災地は少しずつ復興されつつも、
被災された方々の傷は深い訳で。

加えて最近では大きな地震が
至るところで頻繁に起きている中、
震災に焦点を当てた作品っていうのは
なかなかリスクが多かっただろうなと。
(地震のアラームなんて、
映像越しでもドキドキしてしまったし
きっと作品自体を素直に楽しんで
見ることができない人も多いだろうしね)

ただそんなリスクを考えても、
というかリスクがあるからこそ、
制作されたであろう本作にすごくパワーを感じて。

震災っていう自然現象に物語を付け加えて
絶望を美化せずに、希望を押し付けずに、
主人公のすずめや周りのキャラクターを通して
震災っていう漠然とした恐怖を受け入れていく
っていう一つの体験をしたような感覚で。

また個人的に印象的だったのは
すずめが死ぬことを怖がらず、
愛する人のいない世界を怖いと伝えたシーン。
これって天気の子とも通ずると思うんだけど
”若さゆえの強さ”なのかなって。
若さって、リミッターもブレーキもなくて
ただ真っ直ぐにエネルギーを注ぐことが
できると思っていて。
ただ、年齢を重ねていく度にどうしても
環境や思考のしがらみが加わって
シンプルな選択力や行動力みたいなものが
失われていくんだよね。

天気の子では、
世界よりも愛する人を選択した彼の選択。
本作では、自分の死よりも愛する人を
選択した彼女の選択。
大人になった私たちからすると
否定したくもなるけど羨ましくもあって。

あとはやっぱり、子供たちも見る
アニメーション作品の中で訴えかける
平和の為の犠牲というテーマがね。

本作ではかなめいしって
すごく大きなキーだと思っていて、
東京が危機に陥ったときも猫の放った
「皆が死ぬよ」っていうパワーワードも
観ている子供たちはどう受け止めるのかなって

そんな大人でも頭を抱えてしまうような
正解のない問題を、今を生きる子供たちが
どう考え受け止めるかが気になってしまって。

加えて、すずめが過去の自分に放った
「未来は怖くない。
あなたは光の中で育つ。
そう決まっているの。」
って台詞はこどもたちを守るべき
私たち大人への教訓でもあったなと。

愛をもって、未来に心を開いて
今を受け入れる。
そんな大きな教えを受けた気がするな〜
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