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SINGULAのTTのネタバレレビュー・内容・結末

SINGULA(2023年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

推しは12番なのだが、1番魅力的なのは5番でした。

人間がAIを語るという行為が急速に増えてきた昨今において、その行為が一体どういったものなのかを、逆にAIに人間達を語らせることで表現した作品と受け取りました。というか出てくる15人のキャラクターがどう見てもAIじゃないのでここは言うまでもないですね。

まず彼らの行為はディベートとしては成り立っていません。
そもそも前提条件の共有がされていません。交わせられる議論自体も人間についての情報が足りておらず、論理も抜けており、推論ベースの罵り合いになっている。これはAIの事をよく知らない(AIのトップ研究者ではない)我々一般人がAIについて語る時の様子と余りにも似ています。

結局人間の良いところと悪いところを思いつくままに挙げて、大した判断基準もなくただ口喧嘩をしているわけですが、そもそもAIである自分たちは何者なのか、どういう社会を作りたいか、自分はどう生きたいかをまず固めようよ、と聞いているうちに私はイライラしてきます。

そしてAI達もそのことに気づいたところで、最終投票をする事すらなく急に終幕します。つまり人間を虐殺すべきか?共存すべきか?の多数決がどちらに転ぶのかということ自体に一切の価値は無いわけです。中間投票の時点で各々が自分の考えを持っていたということのみが描写されるべきであると。
ちなみに、最初は虐殺に反対と言っていたAIが、議論終盤で、人間との共存とか、AIは人間に管理されて生きるべきなどと表現の仕方を変えていく様は見ていてかなりニヤニヤできます。

今後人間がAIと付き合っていくに当たって
、AI起点で考えるのではなく、自分はどういう生き物なのかということからスタートして、その上で相手であるAIをよく知った上で、個人個人が今考えようよという話だと思いました。
AIを排斥するか?共存するかなんてのは個人のスケールではなるようにしかならないのだから、自分自身はどう生きたいのかしか無いわけです。
まあこんなことは何もAIに限ったことじゃないんだけど、それを見つめ直す恰好の機会がAIのおかげで今訪れているわけと。

3人くらい(8番9番と誰だっけ)全然喋らない人がいたと思うが、投票権は持っている。モノ言わぬ一般人が紛れているというのがまたとても憎い演出。
それはそうと、この映画が1人15役である必然性は、15人それぞれが実は個性を持ちかつ視野の狭い別個体である=一般の人間の目線である事、その一方で同時にこの問題について深く考えている先生という存在の内面の総体でもある事を強調させる仕掛けだと思うのだが、
自分がこの映画を見ようと思ったのは、単にふと目に入ったポスターに惹かれたからだったので、パッと見のインパクトって大事だなと思いました。
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