Chris

猿の惑星のChrisのネタバレレビュー・内容・結末

猿の惑星(1968年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

ロケーション、カメラワーク、特殊メイクなどなど1968年に制作されたとは思えない素晴らしい作品だった。必要最低限の語りで状況や設定を説明し、ストーリーの展開のみで理解できたので観やすく且つ世界観に没入できた。
見渡す限りの荒野やジャングルのロケーションが地球とは異なる地のように感じられた。カメラワークに関して序盤は広大な大自然を歩く3人以外何もないことを強調するような引きでの画角が多かった。そしてそれがラストでこの惑星が地球だと明らかになるミスリードになっている。
ストーリーが進むにつれて人や猿の表情や発言にクローズアップするため寄りの画角になったが、これはこの惑星の真実に迫って行き、徐々に露見していくことにリンクしている印象を受けた。
思い込みや先入観からはじめは疑うこともなかったが、人語を話す人間のおもちゃ、入れ歯などからかつて人間の文明が発展していた証拠が見つかり、観客はその共通点の多さを疑問に思う。そして事実はテイラーにとって最悪のタイミングで発覚する。この構成といい埋まった自由の女神の発見という確実で粋な地球である証拠の明かし方の秀逸さに感銘を受けた。
そしてその時にもカメラワークはゆっくり引きに戻される。はじめとは逆に大自然にたった一つの人工物がある様を写し地球であると確定させた。伏線やその明かし方までとてつもない監督、脚本の技量にまんまと踊らされ脱帽した。
また猿たちの特殊メイクなどのクオリティも高く、喜怒哀楽の表情まで表現していてすごいと思うと共に恐ろしかった。彼らが人間らしくすればするほど気味が悪く感じた。奇妙な世界観の中で勇気あるテイラーが逃走したり対抗したりする様子も面白いので中盤も退屈せずに観ていられた。
またエンドロール後も波打つ音だけが鳴りっぱなしでその演出がテイラーの絶望と儚い様を強調させていて良かった。自分にとっては素晴らしい映画を観たという称賛の気持ちと、あまりの凄さに呆然とさせられる不思議な時間でもあった。
これが傑作と言わねば何と言うのだろう。アナログな手法で非常に完成度の高い世界を表現し、脚本は当時からしてみれば革命的だっただろう。これからも語り継がれる映画界に多大なる影響を与えた作品だと思う。
Chris

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