金宮さん

オアシスの金宮さんのネタバレレビュー・内容・結末

オアシス(2002年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

正直なところ乗れなかった。
その発言に勇気が必要なのだが。

完全に好みの問題で、特筆すべき「熱演」が登場する作品はなんとなく身構えてしまうところがある。その極端な演技への指導は作り手の選択であり、「この作品は極端です」という自己紹介に感じるから。

はたして、今作から感じ取るべきはなんだったのだろう。普通の青春や恋愛がゆるされない不条理、そしてそれを我々が作り上げていることへの反省か?その場合、本作のプロットは無理がある。なぜなら最大の原因があまりにも最低な双方の兄にあるから。

悲劇的ドラマチックを描くために、まっすぐな敵キャラを作り上げるのは、たとえば『梨泰院クラス』のような池井戸潤的エンタメならいいものの、今作のメッセージにはそぐわない。そいつらがいなかったら良かったのか?ってなっちゃうから。

そういう意味では、障害のある人を冷めた目で見る大衆エピソードといった焼肉店シークエンスあたりの温度感が誠実で、ジョンドゥがなんらかの障害を抱えていることについて明言がないことも作品として正しいスタンスだった。それなのに途中から明らかに大味になる。

体感では、家族での食事会で「実際のひき逃げ犯は兄であった」種明かしが異様に丁寧な説明口調だったところからはじまった。

その後の強姦冤罪で連行された警察署での全員の立ち振る舞いは、騒いでるだけで全員がちょっとおかしな行動をしている。本人たちが言い訳すらしないのは、愛の育みすら許されないことへの諦観として飲み込めたとしても、家族の挙動がはちゃめちゃなのは彼らがサイコだからということなのか?弟はジョンドゥが侮辱されたらキレるようなキャラだったっけ?兄がジョンドゥにキレ散らかす資格はないが、まあこいつはクズ野郎か。

「熱演」やラジカルなキャラ造形があまねく悪いわけではない。フィクションにおいてそれを選択してるわけだから、どうしてもその先にチラ見えする「安易」に敏感になってしまう。冒頭にあるとおり、作品の批判に勇気が必要なものに仕立て上げているわけでもあり。
金宮さん

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