Chris

ハンサム★スーツのChrisのネタバレレビュー・内容・結末

ハンサム★スーツ(2008年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

小さい頃に数回観ただけだったが、内容や構成はほぼ覚えていた。それほどこの映画が印象に残っていたからだ。しかし改めて観ると少し昔とは感想が変わった。
大人にしか分からないようなネタがあるとかそういうことではない。むしろこの映画は内容は分かりやすくて、構成もシンプルのため誰でも楽しめる作品となっている。
しかしブサイクな見た目がコンプレックスの琢郎の苦悩や、だからといって今までの小さな幸せを犠牲にしてまで新しい人生を歩むのかという葛藤など前半のポップな雰囲気とは打って変わってテーマが意外と重い。
それが露骨に表れていたのが痴漢に間違われるシーンだ。今まではブサイクをいじられたり、好きな子に振られる様子もコメディに描かれていた。それは演じているのが芸人の塚地だからかもしれない。現実でもコイツなら笑ってもいい、いじっても怒らないと思っている人がいるかもしれない。しかし本人はどのように思っているかなど当人にならないと分からない。
見た目だけで判断して、理不尽な言いがかりをつけられ、ひたすら罵倒されるこの場面で初めて琢朗に同情した。少しの罪悪感さえ覚えた。幼少の頃観た時はこんな感覚はなかった。多分生きてきた年数が増えて色々な苦い経験をしたからだろう。ハンサムスーツに依存する気持ちもわかる。それでも琢郎はブサイクなままでも自分らしく生きる決断をする。見た目はブサイクでも彼の中身はハンサムなのだ。
本当に大事なのは見た目ではなく中身であるということを琢郎、寛子の二つの反対の立場からわかりやすく、そして複雑に描いている。
ラストで本江さんが実は寛子だったことがわかるが、琢郎が惚れたのは本江さんであって寛子じゃないのになと少し引っかかった。琢郎が納得していたのでよしとする。
ともあれ昔の楽しいだけの作品ではなく、感動できて勇気づけられるような作品になっていて今回もすごく楽しめた。スーツを通じて自分自身が見た目で判断していたことに気づき考えを改める、まさに主題歌「マイレボリューション」とピッタリである。エンドロールは感傷に浸るというよりあらゆることに対して頑張りたいと意欲が高まった。昔は理解していなかったほろ苦い部分も合わせて、結果前より好きな作品となった。辛くなったらいつでも観たいと思えるような作品だ。
Chris

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