倉科博文

七人の侍の倉科博文のレビュー・感想・評価

七人の侍(1954年製作の映画)
4.6
「土砂降りの中でのアクションシーン」や「スローモーションの使い方」など、映画史としても革新的な手法を使ったことでも知られる本作
やはり、この時代の映像作品の中でも、空気や情感を映像として表現しようとするそのアイデアや作り方には目を見張るものがある

とある農村ー
そこに棲む農民たちは、略奪を仕掛けてくる野武士たちから自らを守るため、侍を雇うことを決め、ある侍に目をつけるー
はじめ、農民たちの依頼を断る侍だが、その請願に折れて仲間を集い、野武士たちを迎え討つために準備を開始するー


純粋な勧善懲悪と思いきや、単純にそうとは割り切らせないところが、この映画の格を上げていると思う

人間は醜く汚い
しかし、人生一寸先は闇
明日どうなるか、何が起きるかなんて分からない
生きるとは、生き抜くとはそういうことだろう、と胸ぐらを掴まれるような心持ちがした

「七人の侍」も「野伏せり」も、どちらも時代に振り落とされた同じ穴の狢
そして農民たちだって、ただ救われることを待っている白雪姫ではない

釈迦の「毒矢の例え」ではないが、底無し沼に嵌った時に、過去の悔いや理由や葛藤なんかどうでもいい
ただ、目の前の泥を掻き分けて、前に進むしかない
前へ、前へ