倉科博文

アイアムアヒーローの倉科博文のレビュー・感想・評価

アイアムアヒーロー(2015年製作の映画)
3.6
日本のゾンビ映画の現段階、最優秀作品か

パニックホラーにしては、ゾンビがコミカル過ぎて怖さに欠けるかなとも思ったけど、これも計算かも知れません
そう感じた理由は、以下に

うだつの上がらない漫画アシスタントー
仕事も私生活も歯車がズレていく人生ー
そんな中、世界は突然のゾンビの出現によりひっくり返り、彼はそのパニックのさなかに出会った少女を守ろうと心に誓うがー

映画の構造としては、かなりジャンル横断的

最初のゾンビ遭遇シーンは、なかなかしっかりとしたホラー
カット割りや画角など、撮影の仕方も上手くて、普通に怖い
この感覚のまま作れば、歴としたホラー映画にも仕立てられたでしょう

そこからシーンはパニックホラーへ
ここから、ゾンビたちの個性というか愛嬌が出てきて、ちょっとコミカルテイストも含んできます

そして、人間同士の醜い仲間割れへ
ここは個人的に『ザ・ロック』の敵の仲間割れを想起します
まあ、エド・ハリスほどイカした漢は出てきませんが

その後、『進撃の巨人』のようなクエストシーン

最後にゾンビ映画の王道へと続いていきます

あまりゾンビ映画では見たことのない有村架純の処理の仕方も、「面白いなぁ」と唸らされました
あのキャラクター、可愛い(ハート)
大泉洋も、改めて「上手いなぁ」と。。。

いや、よく出来た作品でした
お隣の『新感染』などは、「スゴイ!」と文句無く思わされましたが、日本でこんなパニックホラーが作れるとは

そして、この作品の裏のテーマとしては、ゾンビみたいな怪物よりも、人間の”心の中の怪物”の方がよっぽど怖いんじゃねぇか、という問いかけがあったんではないでしょうか
だから、あえてゾンビを、ある意味で純粋な存在としてコミカルに描いたのかなぁ、と思いましたよ

もちろん、「そんなにゴチャゴチャ飛行機が密になって飛んだら事故りますがな」とか、「感染の拡がり方が不自然じゃ無いですか」とか、突っ込もうと思えば色々言えますが、それを覆い隠すくらいには魅力的な要素に溢れています

せっかくなので、個人的には付け加えたいアイディアがー
世界中からの垂涎の的となる今回の「病禍への治療薬」ー
誰とは言いませんが、体内で出来た病原体への抗体が、このテンプレートになるー
といったマクガフィン的な役割を与えてあげても良かったのでは?

それはさておきー
なんか、「やりたいこと、全部詰め込んじゃった」という声が聞こえてきそうなほど、監督の映画愛を感じたような作品でした