倉科博文

The Witch/魔女の倉科博文のレビュー・感想・評価

The Witch/魔女(2018年製作の映画)
3.7
『ク・ジャユン』がキャラクターとして魅力的すぎる

ストーリーとしては、そんなに変わり映えのするものでは無いが、この主人公を生み出せた時点で、この映画は成功だろう
でも、こんなに強いのに、こんなにハラハラ出来るのは、作品として純粋に上手いなぁと思います

彼女を演じたキム・ダミは、本作がデビュー作
本当に奇跡的な作品だ
本人によれば、この作品での自分の演技は「100点中60点」らしい
冗談でしょ

もし自分が『ク・ジャユン』のような、こんな力を手に入れていたら、どんな風に振る舞うだろうか
こんな眼が、こんな顔が、出来るだろうか
嬉しかったり、悲しかったり、愛おしかったり、そんな感情もきちんと消化して、その上で、拘束台の上で不敵に笑った彼女の笑みが凄くてすごくて仕方ない

この映画のカタルシスも、恐らくこの拘束台における一点に集約されるでしょう
それまで運命に翻弄されるだけ、波濤(はとう)に揺れる泡沫(うたかた)に過ぎないと思われていたものが、実は生態系をひっくり返すような劇物だった、というパラダイムシフトの瞬間
それまで泰然としていたものと、楚々とあらねばならなかったものの、立場の逆転
作り手や観客の胸の内に、少なからず宿るルサンチマンの開放が、ここにあるような気がするのです
この1シーンをクライマックスとして、あとのシーンは前戯と後戯みたいなものでしょう

そして、名もない少女だったキム・ダミが、この一作でスターの座に駆け上がったストーリーも、この人生における逆転劇と重なるのです
まるで、『ロッキー』のように

撮影もカットも凄く良かった
続きが早く見たい