平野レミゼラブル

柳生一族の陰謀の平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

柳生一族の陰謀(2020年製作のドラマ)
3.3
オールタイム・マイ・ベスト映画の一角にして最強の史実クソ喰らえ時代劇な東映映画『柳生一族の陰謀』のリメイクであるNHKスペシャルドラマ版をやっとこさ観ました。

【東映映画版感想】
https://filmarks.com/movies/23654/reviews/65076473

2時間強だった映画版より短い1時間半のドラマであるため、当然展開が圧縮されるような改変はあるものの、プロット自体は全く同じなので概ね満足でした。
ただ、面白くないワケではないものの、リメイク元は東映が時代劇復興を目指して多額の予算と当時の豪華スター陣を投じたオールスター巨篇であるため、BS単発ドラマの予算程度の本作は物凄い見劣りしてしまう。そして、当然ながら見劣りしてしまった分微妙という感想に落ち着いてしまうというのが正直なところかな……

これ言っちゃうと凄い失礼なんですけど、やっぱりキャスト全員東映版の下位置換なんですよ……
千葉真一の柳生十兵衛と比べると溝端淳平の十兵衛は細すぎるし、柳但のオーバーアクトっぷりにしてもシェイクスピア演劇の吉田鋼太郎よりも歌舞伎の萬屋錦之介の方が気品に溢れていたというように。
ただ、これは脂乗りまくっていた東映と『仁義なき戦い』等で共にスターダムに登り詰めた同じく脂でギラギラの名優達の勢いが凄まじすぎるのであって、比較すること自体が酷でもありますね。あの70年代後半の東映映画から迸るエネルギーってのは、あの時代でなければ絞り出せない狂い切ったものだと思うの……

その中で唯一、オリジナルと同等の存在階級を示していたのが『柳生一族の陰謀』における名物キャラ・烏丸少将文麿を演じた波岡一喜さん。見た目白塗りのおじゃる口調で滅茶苦茶弱そうながら「☆5セイバー」「地上最強の麻呂」「信長の野望に出たなら全ステータス90超えのチート」足るギャップが魅力な強キャラ烏丸少将を見事に演じ切っていました。波岡さんのパブリックイメージである「チンピラ・そんなに強くない」を一新する怪演で、そこら辺のインパクトは元の役者の時点で結構強そうな成田三樹夫以上と言って良いかもしれない。

というか、烏丸少将文麿はその強烈なインパクトに反してオリジナル版が最弱と呼ばれるキャラクターでして、最後発の本作では最大限強さが盛られています。柳生の子息を一刀で斬り伏せる(オリジナルと逆転してこちらでは左門ではなく又十郎が死ぬ)剣豪っぷりはそのままに、返す刀で根来衆頭領に致命傷を負わせ追撃で矢をビュンビュン放つ武芸百般にして容赦の無さ(ここら辺は矢で十兵衛の目を潰した1978年の連ドラ版のオマージュか)。
更に圧巻なのが、頭領が相討ち狙いで自爆を仕掛けてきたことにいち早く気付き、咄嗟に近くの兵を肉の盾にしてやり過ごし、煙の中から無傷で現れる絵面。ちょっと強すぎる。

・本作の烏丸少将文麿語録
「この烏丸少将文麿、柳生の首、お一つ頂いとこ」
「何と軽い!これが其方の命の重さか!!」
「(爆風の中から現れて)ふぅ~剣呑、剣呑。汚れるとこやった」

例によって「姿は隠しても獣は匂いでわかりまするぞ」の名言も飛び出るので、本当に烏丸少将最強豪華パックなんだよな。
オリジナルと違って柳生十兵衛が暗器も使わず挑んできた真っ向勝負で敗北した分、若干弱くなった気がしなくもないけど、まあ正々堂々闘った上での結果だから立派なもんです。
波岡さんの烏丸少将観れただけでも良かったって感じだ。

平野レミゼラブルさんの鑑賞したドラマ