Fitzcarraldo

プロット・アゲンスト・アメリカのFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

4.2
現代アメリカ文学の四天王であるPhilip Rothによる同名小説を原作に、名作大作の確変連チャンをかますHBOによる全6話のリミテッドシリーズ。

第二次世界大戦中の1940年の大統領選で、親ヒトラーである英雄的飛行士チャールズ・リンドバーグが現職のルーズベルトに勝利していたら…という歴史改変モノであるのだが、単純に歴史を弄ぶのではなく現在のアメリカ大統領選に通じてしまう旬な物語。

陰謀論を発信し続けるQ Anonの信者がアメリカで増殖中。このままだと11月の大統領選でトランプが負けても中国の陰謀だとか、不法移民の不正投票だとかいってトランプは認めないつもりだとか…裁判になっても最高裁の判事がトランプ寄りの人事が多数派になってしまっているから厳しいかも…マジでトランプ降ろせないかも…

アレックス・ジョーンズは激しい口調で陰謀論を唱えまくり、その陰謀論に付随した商品を販売してボロ儲け…さらにアレックス・ジョーンズの番組に現職のトランプ大統領が出演して金儲けに拍車がかかる。

国家とは…人種とは…
何を信じるのかは個人の自由であるのだが、権力を持った者が、どういう思想なのか、どういう行動を起こすのかを注視することは必要であると思う。ヒトラーと心中するのか、早々に国を捨てて亡命するのか…なにも考えないでいると、お上に流されて親衛隊にでもなるのだ。

本作の主役の家族である父は常にラジオで情報を得ている。母親も政治に敏感で、早々にカナダへの亡命を画策する。エンタメ界 最強のサラブレッドであるゾーイ・カザンの魅力も相まって、こんな知性的な嫁が欲しい。

予告でKKKの白装束が登場して、コイツらとの対決を期待していたのだが…結局、最終回まで出番なし。最終回もニアミスで擦る程度しか出てこなかった。KKKならいくらでもドラマつくれると思うんだけど…直接的な被害は何も受けてないし。

長男の同化計画は?最終回でいつの間にか大人しく良い子になってる。あんな反抗期だったのに…最終回の尻すぼみと膨れ上がった期待を裏切られた感じが…ラストに無理やり詰め込んだ感ある。



四話

モンティ
「戦争の英雄になろうと故郷を飛び出して、足を失うなんて一体なんのためだ」

ハーマン
「なんのため?ナチス贔屓の大統領が嫌いだからさ。昔は兄貴だってリンドバーグを嫌ってたのに。景気が良くなったら奴の正体を忘れたのか⁉商売人は金さえ儲ければいいのかよ…」

大概の商売人は、景気が良くなればそれでいいと考える。

政治や宗教の話が、各家庭でどのように行われているのか?どのような教育をして、親が子に何を教え何を見せないのか?その辺が垣間見れるのは興味深い。

次男のフィリップくんは切手を集めている。
オレも同じ年頃の時に切手収集をしていたから非常に懐かしい気持ちになる。切手を扱う際には指紋をつけないためにピンセットを使っていたけど、本作ではフィリップのジャイアン的な友達のアール君が、

フィリップ
「ピンセットが必要?」
アール
「切手を傷めないからね」

と言っていた…
あっそうなの…指紋じゃないんだ…

さらに…

フィリップ
「お金を隠してるの?」
アール
「ママやパパがいない時に小銭をくすねてるんだ。小銭は数えないだろ⁉でも少し残す。全部盗んだらバレるからな!」

と世界共通の子供の㊙テクを公開。


本作の子供から大人までの40年代のクラシックスタイルの服装が最高にカッコイイ!
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