Fitzcarraldo

ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路のFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

3.1
Matt Ruffの著作"Lovecraft Country"(2016)をMisha Green、Jordan Peele、J.J. Abramsなど錚々たる顔ぶれが製作総指揮について映像化。


SFもの、ホラーもの…の境界線というか、物語の世界観、ルール提示をさりげなく上手に見せて欲しい。

どういう見方をしていいのか、こちらのスタンスが定まらないままに、進んでいってしまうために、なんだか腰が落ち着かない。

怪物が出てくる世界であるというのは、わかったが…人間側も魔術が使えるの?

2話での森の中の、秘密結社、友愛会の人たちは何なの?人間じゃないの?透明のバリア機能みたいなのは何なの?誰が作り出したの?車すらも通さない強力なものだったけど…

息子の中の息子とは?
どういうこと?

三者三様に襲われてたのは何なの?幻なの?
夢なの?リアルなの?透明の壁の向こう側では、まるで動物園の動物を見るような感じで、白人連中が、襲われている三者三様を見て楽しんでいたけど…

この説明も何もない。

んで、主人公の男は、この時にアジア系の女の子と闘って、肩をナイフで刺されてたけど…次のカットでは、傷すらない!どういうことなの?
こういう世界観なり、ルールというか…こういう前提ですよみたいなのは欲しいよね…

説明もなくガンガンやられても理解できない。

オヤジは何されてたの?

森の中の怪獣たちを笛の音ひとつで操っていたが、あの怪物を飼ってるの?牛か馬か?逆子で大変だって言われて、駆け寄った娘が、逆子を引っ張り出したときに産まれてきたのは、エイリアンみたいな怪物だったけど…

もうなんなの?
これ後で、説明されるの?


町山サンの解説聞いても何とかって感じなのに、これを解説抜きで見て分かるのか?原作も読まず、SF弱者の自分は置いてけぼり感がすごい。


映画ファーストマンでも使用されたギル・スコット・ヘロンの詩の朗読。音楽に合わせて詠んでいるので完全にラップ。ヒップホップの祖とも…

マーヴィン・ゲイのインナーシティも、もろこの曲に影響を受けているのだとか…

ライブのお客さんの笑い声とか普通に入ってる録音が唐突に流れるから、これを知らないと意味ワカラナイ…このまま知らないで意味ワカラナイまま見るのと、流れを知ってみるのでは意味合いや、製作側の意図が伝わらない。

知ってる人だけ分かればいいと突き放すのか…もう少し丁寧に説明させるのか…どっちがいいんだろう…?

ギル・スコット・ヘロンのこの詩をどうやって説明するのか…それも難しいけど…


ー字幕より

「詩をひとつ。"月に降りた白んぼ"…この詩を書いたきっかけは、月に降りた白んぼたちだ。ひらめきをくれて感謝してる。それじゃ聴いてくれ…
(コンガが鳴る)

妹がネズミに噛まれた
月の白んぼのせいだ

顔と腕が腫れた
月の白んぼのせいだ

病院代を払えない
月の白んぼのせいだ

10年後も払い続ける
月の白んぼのせいだ

ゆうべ家賃が上がった
月の白んぼのせいだ

お湯もトイレも電気もない
月の白んぼのせいだ

なぜ家賃が上がる?
月の白んぼのせいだ

今だって週50ドル払ってる
月の白んぼのせいだ

税金で金は消えジャンキーが俺を参らせる
食い物も高くなって踏んだり蹴ったり

妹がネズミに噛まれた
月の白んぼのせいだ

顔と腕が腫れた
月の白んぼのせいだ

俺が稼いだ金は
あの白んぼのためなのか

金がない
月に降りた白んぼのせいだ

月に降りた白んぼには
もううんざりだ

病院代の請求書を
送りつけてやる

月の白んぼへ」

"Whitey on the Moon"より



3話

白んぼが仕返しに家に侵入。

エレベーターの扉を開けて覗くと、すごい勢いでエレベーターが動き出し、首をちょん切る…
千切れた胴体がカメラの前に倒れてくる。
千切れた首なし胴体から、血が温泉のように湧き出る…

うげぇ…



4話


○ボストンの博物館
親父は飲み仲間だという一介の警備員と話をつける。なぜかアティカス一行を夜中に侵入させてくれる。たかだか普通の警備員が?そんな権限ないだろ?そして滞りなく難なく侵入する一行…
やりたい放題やな…

そしてタイタスの銅像。
懐中時計を消せ!と親父。
懐中時計を消すと、月の光が窓から光線のように入り、銅像に反射して、海図に反射して、一部分を照らす。照らされた部分を触ると、銅像の台座が開く…。

???月の位置は日によって変わるよね。満ち欠けもあるし…侵入した日が、たまたますべての条件が揃った夜だったってこと?ちと都合良すぎないか?



ティックの親父
「俺の親父が言ってた。"自分のラブソングをもて"と。女が怒った時に…自分に歌うんだ。歌い終わる頃には女は落ち着き、男はまた女を愛せる。女が怒るのは…愛が欲しいからだ」

まさに!
こういう処世術を親父から伝授するのは大切なこと。というか、こういう処世術すらなにも持ってなかったウチの親父。ただただ自分が怒り狂ってむくれるだけ。なにも教わってないし、教わることは反面教師の部分ばかり。こうはならないようにしよう。こういう大人には、こういう男にはならないようにという。

クリスマスに渋谷の街を歩けば行き交うのは、若いカップルばかり。コロナはどこ吹く風と、通常通りのカップルたち。

しかし、どこのカップルもうまくいってるわけではない。明らかに何かに不満をもってむくれた者を何人もみかけた。

「自分のラブソングをもてよ」



保管庫の扉に腕が挟まれてる。


第四話の監督はビクトリアン・マホニーというアフリカ系の女性監督。
この人は、J.J.エイブラムスのSTAR WARSの第2班監督をやってた人らしい。
そしてSTAR WARSの生みの親ジョージ・ルーカスのインディ・ジョーンズシリーズに似てる話を今回担当しているという…



アメリカ先住民ヤヒマは両性具有なんだと…
日本版は当然ながら下半身にはモザイクがかけられていたから、普通の女性にしか見えなかったけど、モザイクの下にはチンチンがついてるらしい…そこを隠してしまったら、意味合いが変わってしまうんたけど…スターチャンネルは有料のチャンネルなわけだし、そこまでチンチンを気にする必要はないと思うのだが…

誰に気を遣ったモザイクなの?セックスシーンでもなんでもなく、ただ立ってるだけのシーンならモザイクいらんやろ…

町山サンの解説聞かなかったら分からんかったよ。





第5話


○百貨店
白人へと変身した姉が副支店長として働く。

ヒラリー
「タマラ!それじゃダメ!白のヒールは単色のドレスと合わせて。それが高級店らしい陳列よ」

タマラ
「最善を尽くしています」

ヒラリー
「それじゃ足りない!黒人は並の努力じゃ認められないの!なぜか分かる?白人たちは腐ってる。何をされるか分からない。圧倒的に差をつけないと…」

このような感覚が、島国である我々日本人には備わっていないのと、同調圧力が強いのがマリアージュしているので、世界で活躍する日本人が育たないような気がする。
最後の最後で負けてしまうのは、同じ肌の人に囲まれて競争よりも同調してればいいということに起因していないか…

黒人と白人という、目で見て分かりやすい違いがあるから、それによる軋轢も生じやすい。それだけの辛酸を味わったからこそ、徹底的に努力して圧倒的な差をつけろ!と教える。

日本にも、もちろん嫌韓や大陸差別など根強い差別があるが、目に見えにくい。そして、白人同様に、なぜか自分たちの方が勝っていると未だに思っている。

人種や民族で優劣をつけだしたら、その先は…民族浄化でヒトラーと同じことになる。




脱皮シーンが物凄ぇ…
白人から国人へと脱皮…エグい。
白い肌の下から、黒い肌が徐々に見えてくる。
ポロポロと剥がれ落ちていく白人の肌。
気持ち悪い。音も生々しい…。



第6話

また気持ち悪い。
男を部屋に誘って、いきなり脱ぎ出したと思ったらセックス開始…すると、女の耳から鼻から目から口から、サナギ虫のデカイのがダァーっと出てきて男を持ち上げ一瞬で跡形もなく消し去った。なんじゃこれ…

実の父親が娘を愛してしまったから、母は夫を殺すために、巫女が九尾狐の魂を娘に吹き込んだ。
100人の魂を奪わないと人間に戻れないという代償とともに…


看護師の同僚で、なぜか鬼ブサイクなのに男からモテモテという設定の眉毛女子ヨンジャ。どうやらアカらしく…

ヨンジャ
「みんなと違うのは悪いことじゃない。みんなと違う人を責めるのが悪いの。私達は結局同じなの。みんな同じ人間よ」

いいこという。
その通り。これっぽっちの小さな世界観でしか生きてない、考え方や視野の狭い人間こそが、くだらない慣習や世間体に囚われて、普通と違うだの人と違うだの責め立てる。



アティカスは小説の物語を、ジアは映画を愛している。

町山
「映画とか小説とか、二人とも現実と違うモノに救いを求めているんだと…もしかしたら、自分と似たような魂の人なのかもしれない…と思い始める。そこから、この二人は恋に落ちていくんですね」



第10話

姉になりすましたクリスティーナ…
わざわざ道中の間、ずっと姉になり変わってたの?まわりくどくね?なんのために?んで、いよいよ正体を明かした時に、肉弾戦の格闘が始まるけど、なんで魔力使わないの?使えばええやん!なり変わってる時は魔力使えないというルールでもあるのか?よおわからん。


結局、最後の最後までいまいち腑に落ちないことばかりで、素直に楽しめたかというと…そんなことはない。良さげな雰囲気は常にあるんだけども…なんだかなぁ。あとは好みの問題か?
Fitzcarraldo

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