SANUKIAQUA

すずめの戸締まりのSANUKIAQUAのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.2
幼い頃、田舎の祖父母の家の目の前には
広い病院の跡があった。
院長先生が亡くなって閉院してから
建物もそのままでずっと野放しで
当時の僕には不気味で
ボールが入り込んで
柵を越えて取りに行くのが怖かった。
近くにはずっと前に閉館した映画館や
幼稚園が草や蔦が絡まったまま残っていた。
この映画を見ながらずっと思い出していた。
かつて人がいて、賑やかだった場所の
寂しそうな感じを。
人口がどんどん減っていく田舎、
特に災害とか開発に失敗したところは
どんどん見捨てられてしまうんだろうなと
怖くなって寂しい。

題材としては震災による傷と再生を
描いていて、難しいテーマで
日本人の微妙な感情に揺さぶりをかける
意欲的な作品だと思う。
他にもこういうテーマの作品を見たけれど
真摯な姿勢を感じた反面
当事者だったらどうだろうという
埋め難い溝も感じてしまった。

鈴芽が行く道で彼女を助けてくれる人たちは
映画的に都合のいい人たちではなくて
皆、何かを失った経験があり
誰かに助けられた経験があり
人との繋がりを大切にしているからこそ
鈴芽を助けたんだと思う。

死ぬのが怖くないという鈴芽の言葉、
繰り返される、行ってきますの言葉が
胸を締め付けるようだった。
生きるも死ぬも運というのは
当事者の話を伺って出た言葉だろう。
出会いを大切に明日を生きる
メッセージは残るだろうね。

ミミズが地震を引き起こす、
それを封じる人がいる、
地震国日本ならではの感性ではと思うので
海外の方の感想も聞いてみたい。

ヒロインは可愛いし
その相手もイケメン。
商業的には仕方がないんだろうけど
そうでない主人公たちなら
もっと良かったかもしれないなぁ。
最初はとてもこの2人がくっつくなんて
想像すらできない、ってくらいが
面白かったと思う。

見慣れた風景が丁寧に描かれた絵は
相変わらず綺麗なんだけど
いつか未来にこの映画を見た世代が
ここってこんな綺麗だったんだ
なんて言わない未来になっていて欲しいな。
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