黒澤明の「生きる」をカズオ・イシグロが脚色、主演はビル・ナイ。
黒澤版のディテールは記憶の彼方なので、ストーリーの細かな違いまでは気にせず見た。
舞台は1953年のロンドンである。あらすじなどは略。
この作品に描かれてるのは、子ども時代のカズオ・イシグロの瞳に映ったロンドンの男たちだそうだが、戦後8年のロンドンに大戦の影がほとんどない(ように描いている)のが興味深い。
建物も荒れてないし、ボロをまとって足を引きずった人とかもいない。主人公の息子の出征シーンが一瞬入るだけ。
唯一、戦争の跡を感じるのが、公園を造る空き地になっている。
あと、黒澤版と同様の「世間で言うところの豪遊をしてみたけど全然楽しくないにゃあ…」な感じは、若くなくなってから見るとより沁みる。
ビル・ナイは大変はまっていて、彼のファンには楽しめると思います。
こういう作品、どうしても「ALWAYS 三丁目の夕日」的な「あの時代、貧しかったけど心はキレイでした」みたいな懐古主義に行きがちになるが、そこと距離を置く作りは大変好感が持てた。
あと当時のロンドン・カウンティ・カウンシルのお役所内部も良かった。