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TAR/ターのtobioのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.6
なぜか、ターは実在の人物と思っていたが、観ているうちに違うなと気づいた。いきなりエンドロール(エンドじゃないけど)から始まるし、最初のインタビューが長すぎて危うく寝てしまうところだった。
あれは冒頭のターが指揮者としての頂点を極めた完成形、最終形で、ここからこの映画が始まるという意味だったのか?

ターは才能があり、音楽を愛し、作曲や指揮の仕事に精魂込めて取り組んでいる。人間関係は二の次で、人格に問題もある。過去には、天才とはそういうもの、と問題にされなかった時代もあったのだと思う。
学生や若い音楽家の考え方が変わり、才能だけでなくポリティカル・コレクトネスが求められるようになり、人々がSNSを通じ意識を共有する現代は、専門性だけを極めればいい時代ではなくなった。
ターは全てを失ってからそれに気づき、なお挫けることなく再出発を決意する。とことん精神が強く、また音楽への愛が強いのだろう。実家でビデオを観ながらいい笑顔をしていた。リンダをリディアに改名してたのはその方がかっこいいからだろうか?
クラシックではない曲の指揮からしか始められなかったが、作曲者の属性で曲を判断せず、作曲者の意図を考えて演奏することは彼女の今までのポリシー通り。
彼女の生き方に重点を置いた映画だったが、音楽シーンももっとたくさん観たかった。
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