Bitdemonz

X エックスのBitdemonzのレビュー・感想・評価

X エックス(2022年製作の映画)
4.0
物語設定の時代背景を含めて体裁こそ往年のホラー的な装いを持ちながら、構造はなかなかに入り組んでおり、カジュアルなホラーとしても楽しめる(とはいえ本格的なものを求めるとややパンチに欠けるか)表層と、時代に合わせた表現(映像、音楽、小道具含めた諸々のオブジェクト)を巧みに折り込み演出意図された、メタ的に「映画」を意識させつつ、定番となりそうな展開を敢えてズラす“不確定的な要素”としてタイトルの“X”と掛けてくるなどなど…それでいて当時のホラーのテイストへのオマージュや目配せなども忘れない、まさに優等生的な作品。

挙げるとキリがないぐらい様々な部分で丁寧で繊細に造られているのに“見た目が大味”という、老舗のラーメン店のようなシンプルさと味わい深さがありつつ、キラキラした未来が待つ「これから」の世代とそれが叶わなかった「これまで」の世代との対立構造(そしてそれに内包された複雑で様々な背景や感情)も垣間見える“人間”や“人生”といったテーマが“老いの恐怖”と被さってくるという辺り(単純に怖いだけでは終わらせない切ない余韻がある)は、ただならぬ完成度の高さと感じる。


観ようによっては、若者よ!将来の可能性なんて未知数だから好きなように生きろよ!という具合にも見えるし、爺さん婆さんになっても「ヤル気(ホント色んな意味で)」さえあれば死ぬ前にまだまだなんだって出来るぜ!とエールを貰えそうな、という色んな意味での表裏一体なカンジ(タイトルや主要キャストも)など諸々よく出来てるなァと。

なんかもうとにかくアタマがイイ人が作ったカンジがするのに馬鹿なフリしてるスマートな大人ってホントキライです(憧れ)。

詰め込みすぎて突き抜けた爽快感はやや低かったので、アタマカラッポにして見るにはちょっと重たい(そうすると薄くなっちゃう)バランス的には、個人的にもう少し足りなかったかなと。
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