Bitdemonz

オオカミの家のBitdemonzのレビュー・感想・評価

オオカミの家(2018年製作の映画)
4.0
非常にシンプルながら非常に難解でもある。

チリの凄惨な歴史のひとつコロニア・ディグニダを下敷きにしつつ、救いない時代の救いない場所で訪れる“救いのない救い”をイマジネーション全開で爆発させたストップモーションアニメは、ただ物体を動かし人形“劇”を演出するレベルではなく、その魅せ方、空間を曖昧にし文字通り“次元を越えたような”目を見張る表現方法で制限から解き放たれた“自由”が活き活きと輝き(蠢き)、漆黒の現実との相対的な対比としての切なさが込み上げる…

……ってな感想は、正直何も知らずに観た初見では解りませんでした(鑑賞後に詳細を拝見)。

もっとも、一体何で作ったモノなのか?というモノが“そう動く”のか!?などの驚きの連続と、それらのオブジェクトが不気味に蠢く様子と不穏な効果音や何かしらのメタファーらしきものに溢れた難解な展開によって、月並みな言葉にはなっちゃいますが“悪夢的”な映像であることは間違いないです。

悪夢的、と言ってしまったのには少々ワケがありまして、幼少期の記憶、家族で出掛けた施設公園の一角での無料映画試聴会で上映されていた『チコタン』というアニメーション作品によって、初めての「映画」によって植え付けられたトラウマの蓋が開いてしまったんです。

現実と地続きな場所で異次元に没入して感じる“不安”という個人的な“原始的感情”を思い出させてくれたのは、新しいのに何処か懐かしさを感じる“なにか”があったからなのか、などと勝手に感じつつ、劇場で観ておきたかったと改めて思った次第です。
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