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インフィニティ・プールのBitdemonzのレビュー・感想・評価

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
4.6
どんな罪を犯しても“死罪”となるとなる法律だが、金を払ってクローンを作れば、ソイツを身代わりにして免除という金持ち向けの特例措置によって、好き放題やっても問題ナシ(あるが)という閉ざされたリゾート地で、妖しい人妻に誘われるまま徐々に主人公が倫理観の崩壊から自我を喪失していくまでの地獄めぐり。

一見、クローンがどうのとSFじみた内容を思わせるが、割とそのあたりはサラッと流されて、ギラギラとした極彩色のトリップ映像で煙に巻かれつつドンドン堕ちていく主人公、金にものを言わせて好き放題やる層がモラルをも“消費していく”皮肉や“自分が自分たらしめるもの”とは何かを問う禅問答的なテーマも内包しているようである、が、そもそも冒頭から最早、主人公(本体)が死んでしまっている“かもしれない”疑念がずっと付き纏っている点から、終始とても居心地の悪い(とても良い意味で)内容が“一筋縄ではいかない”面白さだと感じ、またこの異質な状況(今の自分はオリジナルなのか)を俯瞰的に楽しむことが出来るのも映画ならではの良さなのかなとも。



“クローン”ものの作品というと必ず思い出すのが楳図かずおの『14歳』に出てくる1エピソードなんですが、“自分がオリジナルじゃなかった”状況を知って嘆くキャラを俯瞰で見ている時の“感情の置き場”が定まらなくなってモヤモヤする感覚が正にこの作品でも味わえました。

また、こうなったらイヤだなァという深読みが割とバシバシ当たって(“悪い冗談”や“ワンちゃん”などなど)案の定イヤ~なキモチになる場面が多くて、そこが多分自分的に“ハマってる”んだな、と感じさせられたポイントなんだと思います。

それからクレジットデザイン周りにグッとくる、音楽はTim Heckerだったのはクレジット見て知ったけど良かった(こんな不気味なスコアも作るのか)、パンフも、前回観た『ボーはおそれている』と同様に世界観を持ち帰れるモノ(パスポートや紙幣など)が入ってるのは個人的に嬉しいポイントなど、良かった点が多かったです。
オススメはしませんが。

最後にミア・ゴス。主人公をからかってるシーンの顔がイラつくぐらい“変顔”なのにカワイイ。いつも眉毛ない気がするけど、イイです。
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