しゅんろっく

小説家の映画のしゅんろっくのレビュー・感想・評価

小説家の映画(2022年製作の映画)
4.2
有楽町ヒュートラで2週間以上前に鑑賞。色々あって、書くのにちょっと時間が空いてしまった。やっぱり細かいところは忘れるな。

ホン・サンス作品は以前配信で「夜の浜辺でひとり」を見ただけだが、それが強烈な印象を残している。おそらくカサベテスから影響を受けているであろう独特の鑑賞後感が、とにかく好きだった。

今回の作品がどうかといえば、設定は異なるものの、ほぼ「夜の浜辺でひとり」とほぼ同じといった印象で痛快だった。
自分の存在意義を問う(ちょっとオーバーな言い方かも)主人公の女性が、キム・ミニさんだけでなく、小説家を演じるイ・ヘヨンさんも加わったりするが、はっきりとした結論を避けつつも、非常に力強い印象を観るものに残して映画は終わっていく。
脇役の役者さんたちも一部は見たことのある顔だし、そうでない人でも「こういう役柄でメガネかけた女性、前の映画にも出てきたよなあ」といった感じ。
登場人物たちは会話を交わしながら海沿いをゆっくり歩き、明るいうちからマッコリを酌み交わす。
そして最後は・・・・。やっぱり。

個人の想いや価値観が、よりピュアな形で投影されている映画(たとえば、ぱっと思いつくのは「ソナチネ」)は、エンターテイメントとはほど遠いが、好きだなあ。優れた監督だと、そんな作風でも突き放されたような感情は一切わかず、共感と勇気をもらえる。

ホン・サンス作品、アマゾンにあるうちに、もっと観ておけばよかった・・・