Laura

遺灰は語るのLauraのレビュー・感想・評価

遺灰は語る(2022年製作の映画)
3.5
イタリア文化に関する高度なリテラシーを要する作品。たとえばある程度イタリア語を解し、(映画でも文学でもないけど)イタリアのことを研究している私のような人間でもピランデッロの『釘』は読んだことがないし、米国への移民に対してどういった考えを持っていた人なのかも知らない。そもそも原題『Leonora Addio』もヴェルディのオペラの一節であって、これは邦訳は悩ましかったと思う。館内に新聞の切り抜きが貼られていたが、本作をめぐる評者たちのことばも心なしかぼんやりしているようにみえた。このような作品にこめられた様々なオマージュをすべて正確に受け取るのはかなり知識が無いと難しいのだ。ただ映像としては古い映画のコラージュが現在時点(これもすぐに飛び去ってゆくとても掴みがたい「現在」なのだが)ときわめてシームレスに繋がっているので、観る者は知識をひけらかされている嫌味さを感じることなく、水の上を漂うように進んでゆける。劇中映画が何だったのか分からないのが悔しいのでとりあえずシネマヴェーラのネオレアリスモ特集へ足を運んで勉強します。
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